WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第208回 デスクトップLinuxに勢い

2004/06/28 16:04

週刊BCN 2004年06月28日vol.1045掲載

 インテルサーバーで一定シェアを確保し、サーバーでは勢いをつけたLinuxが、デスクトップ市場を虎視眈々と狙い始めた。サーバー市場トップシェアをもつレッドハットが、新しいデスクトップLinuxを発売した。これまでも同社は、デスクトップ向け「レッドハットエンタープライズLinux WS」を販売していたが、これはエンジニアやソフト開発者、CADユーザー向けだった。新Linuxは大企業の日常大量データ入力が発生するトランザクション処理やコールセンター利用を狙ったものだ。

パソコンバンドルがカギ

 レッドハットはデスクトップLinuxが普及するには、一連のオフィスソフトがスイートとして提供されることが重要だと説明している。このため新Linuxにはオープンオフィス、エボリューションメールモジラブラウザ、シトリックスICAやソフト管理ツールが包含されている。デスクトップLinuxは米国よりも、国家IT戦略としてマイクロソフトなどに囲い込まれることを警戒する国・地域での普及がまず加速している。米国でも多種のアプリケーションを必要としない金融など、単一業務向けに数千台単位の導入が始まった。特に米金融機関は、ウイルス被害を受けにくいなどLinuxのセキュリティを評価している。

 しかし、一般企業オフィスをターゲットにした場合、ポピュラーな汎用デスクトップアプリケーションの不足が普及の障害となっているのは事実だ。しかし、この欠点を補えるだけのライセンスコストやセキュリティに期待する大企業は、デスクトップでもLinuxに注目している。これまでレッドハットに大きく引き離された独スーゼが、デスクトップ戦略では先行しているといえよう。特にヒューレット・パッカード(HP)が、スーゼLinuxを標準バンドルしたデスクトップシリーズを発売したことで勢いをつけた。レッドハットのデスクトップ戦略に期待するアナリストの1人、IDCのダン・クズネスキー氏は次のように語る。

 「レッドハットは特に世界の大企業ではブランドが浸透しているので、デスクトップに注力する姿勢を見せればそのシェアを急速に高められるだろう」。しかし同氏は、レッドハットのデスクトップ戦略成功には、次の条件をクリアすることが重要だと補足する。「世界的有力パソコンベンダーと提携して、Linuxバンドルのデスクトップ、ノートなどの品揃えが不可欠だ。企業IT部門の購入品リストにLinuxバンドルのデスクトップ、モバイルパソコンがずらりと並んでいることが非常に重要だ。バンドル品が標準構成であることで、不具合がつぶされていると購入責任者が安心するからだ。レッドハットとしては、デル、HP、IBMからデスクトップ提携相手を選びたいはずだ」また米国のSMB(中堅・中小企業)にデスクトップLinuxが普及するには、シェアの大きいホワイトボックスビルダーのLinuxへの動きがポイントになると考えられている。(中野英嗣●文)

  • 1