大遊泳時代

<大遊泳時代>第25回 AV─IT導入が進む老人・介護ホーム

2004/06/28 16:18

週刊BCN 2004年06月28日vol.1045掲載

松下電器産業 役員

 厚生労働省の2001年度国民生活基礎調査では、65歳以上のお年寄りのいる世帯は全世帯の36%、1636万世帯、しかも全世帯の7%、317万世帯が独居老人である。最近、知人や親戚のお見舞や相談もあり、いくつかの有料老人ホーム、介護施設を訪ねた。ビバリーヒルズ型の入居費数千万円払込みの超高級から、寝たきり・重度要介護者専門の入院型、時間シェアリングのデイケア型、そしてシニア向け賃貸マンションといろいろであった。

 80年代のバブル期にできたものは、アート、ダンス、カラオケ、麻雀などのお遊びに重点が置かれていたが、いよいよ入居者が高齢化してきて、肝心の介護施設が不足をきたしている。90年代は対話重視、集団生活型が増えたが、かえって家族、身内との距離をつくり、老人特有のストレスも生んでいるとのこと。難しいものである。そして00年前後からAV-ITを駆使した介護・住居融合型が目立ち出した。1人ひとりの行動を監視する見守りセンサー、携帯電話「FOMA」利用の室内自殺予防監視、離床センサー、おしゃべりロボット、大学病院との遠隔医療診断など、なかなか良くできているが、さらにバリアフリー配慮の設計がもっと欲しいところである。

 まとめると、老人介護施設の基本は、①駅から近く、駐車場があって家族が来やすいこと、②個室で介護と日常生活が完結できること、③AV-ITとバリアフリー設計が徹底していることであるが、究極は入居者とホーム側の心と心のつながりが大切。働く職員や看護士の眼の輝きを見れば、そのホームの方針がわかる。バブル期の多角化経営の1つ、リストラ期の受け皿の1つではいけない。長命化の時代、いかに長寿化にもっていくかにAV-ITが役立てば我々も本望である。それにつけても主治医いわく、「会社は退職金はくれますが健康はくれませんよ」とのご忠告。ワトソン君どうするかね?「会社と同じで、個人の健康も毎年度収支を黒でいきたいものですね!!」
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