大遊泳時代

<大遊泳時代>第26回 e─Japanの次はc─Japan計画を

2004/07/05 16:18

週刊BCN 2004年07月05日vol.1046掲載

松下電器産業 役員

 今年のアカデミー賞は、惜しくも「たそがれ清兵衛」、「ラスト サムライ」は落選したが、昨年はアニメ部門で「千と千尋の神隠し」が賞を獲得した。そこへ最近、カンヌ映画祭で誰も知らなかった中学3年の少年が快挙。

 鈴木光司のホラー大作「リング」のリメーク版の大ヒットは記憶に新しいが、「羅生門」、「七人の侍」を持ち出すまでもなく、ハリウッドや欧州の日本を見る目は熱い。

 しかし最近のソフトコンテンツ産業で、本当に胸を張れるのはアニメ、コミック、ゲームとカラオケ。そして「キャラクタービジネス」。「ポケモン」は30の言語に翻訳され、65か国で放映、「キティーちゃんグッズ」は1万5000種以上に及び、10億ドルを稼ぎ出したという。

 こうした日本の「ジャパニズム文化」の輸出額は丸紅経済研究所によると、1992年から10年間で15兆円と3倍に急増。今や米国へのアニメ関連の輸出額は02年に5200億円と、鉄鋼輸出額より4倍も多いのだ。

 しかし、よくよく調べると、喜んでもいられない。実は本流の映画・ドラマは、鉄鋼・造船と同じで衰退産業の部類に入っている。今や、韓国が一歩先を行き、「冬ソナ」が、中年女性をテレビに釘付けさせた。これは金大中大統領の「自動車を1台売るよりも、映画を1本売れ」のスローガンからだし、仏国の映画への保護育成も国策だし、米国は元来が映画とミサイルとTシャツの輸出国だ。

 日本版ハリウッドを現出させるにはどうしたものか?e-Japan計画で今やブロードバンドは1500万世帯に普及したものの、肝心なコンテンツがない。一歩進んで、c-Japan計画「Cool to Japan」、「かっこいい日本」計画をつくってコンテンツ産業の国際競争力の向上、ソフト人材育成・資源確保など新しい施策を謳ってはどうか。

 ねえ! ワトソン君、「いまやGNPよりGNC(Gross National Cool)だね」。「お役人同様、そんな言葉遊びをしているから、日本は実体が進まないのですよ!」。
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