テイクオフe-Japan戦略II IT実感社会への道標

<テイクオフe-Japan戦略II>49.電子政府構築計画の見直し

2004/07/19 16:18

週刊BCN 2004年07月19日vol.1048掲載

 電子政府構築計画が先月、e-Japan重点計画-2004の策定に合わせて約1年ぶりに改定され、電子政府の利用促進に向けた施策が追加された。電子政府の総合的な窓口である「e-Gov」を大幅に充実するほか、申請件数の多い手続の簡素化・合理化を徹底して利便性向上を図る。キラーコンテンツとして国民の関心が高い年金に関する個人情報の提供を新たに盛り込んだことで、公的個人認証サービスの普及も含めて利用拡大が一気に進むことが期待される。(ジャーナリスト 千葉利宏)

利用促進へ施策を追加

 電子政府構築計画は、昨年7月に策定され、2005年度までの3年間で「利用者本位の行政サービスの提供」、「予算効率の高い簡素な政府の実現」の2つの目標の実現を目指す方針が掲げられた。今年に入って1月には、e-Govがサービス分野別の手続案内を導入するなど大幅に衣替えし、パブリックコメント情報や政策提言受付の一元的な窓口機能も持たせた。2月には業務・システムの最適化計画を策定する対象として72分野を決定。3月には国の申請手続き約1万3000種類、全体の96%でオンライン化が実現。さらにe-Govも電子申請受付機能などを統合する方向で新たな整備方針が策定された。

 今回の見直しでは、e-Govの機能を大幅に充実して05年度末までにワンストップサービスの実現を目指す。現在、電子申請を行う場合には、電子申告なら国税庁、社会保険関係なら社会保険庁のシステムにアクセスする必要があるが、受付窓口をできるだけe-Govに一元化して省庁の違いを意識せずに利用しやすい環境を整えるのが狙いだ。

 「特許庁のシステムのように国際的に申請フォーマットが決まっているものは個別対応せざるを得ないが、各府省の汎用受付システムで受け付けている申請手続きはできるだけe-Govに統合したい」(橋本敏・総務省行政管理局行政情報システム企画課課長補佐)。前回の記事で紹介した不動産のオンライン登記の場合、法務省の汎用受付システムを利用することになっており、将来的にはe-Gov経由でも利用できるようになる方向のようだ。今月中にも、e-Gov経由で利用できる申請手続きを何にするかを含めて、電子申請等受付業務・システムの見直し方針が策定される予定だ。

 さらにe-Govでは行政情報の電子的提供業務・システムの見直し方針も月内に策定する。例えば、予算関係の資料も各府省ごとに形式やデザインがバラバラで読みづらかったり、ウェブ上にある「新着情報」などのボタンの位置や名称が異なっていて探しづらかったりしているため改善していく。

 年間10万件以上と申請件数の多い手続230種類については、重点的に手続の簡素化・合理化を進めて利用促進を図っていくことになった。この230種類の手続で、全体の取り扱い件数の98%(約10億5000万件)をカバーできる。「申請手続きの手数料は基本的に実費を負担していただいているが、郵便代などを節約できることからオンラインの手数料を安くしているケースも出ている」(橋本課長補佐)として利用促進のための方策を検討していく考えだ。

 今回の目玉は、厚生労働省が国民年金、厚生年金の年金加入状況や年金見込額に関する照会について、公的個人認証サービスなどによる本人確認を行った上で、今年度末までにインターネットで回答する仕組みを整備する方針を打ち出したこと。麻生太郎総務大臣、世耕弘成総務大臣政務官の強い働きかけで実現したと聞くが、今後は従来のサービスを電子的に提供するだけでなく、ITを活用して新たなキラーコンテンツを開発することも求められている。

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