テイクオフe-Japan戦略II IT実感社会への道標

<テイクオフe-Japan戦略II>52.電子政府・電子自治体戦略会議

2004/08/18 16:18

週刊BCN 2004年08月09日vol.1051掲載

 今年で4回目を迎える電子政府・電子自治体戦略会議(主催・日本経済新聞社)が今月2、3日に都内のホテルで開催され、多くの地方自治体トップも参加して電子自治体への取り組みや課題を話し合った。前回に引き続き参加した梶原拓岐阜県知事、萩原誠司岡山市長、清原慶子三鷹市長の3氏のほかに、片山善博鳥取県知事や、高橋はるみ北海道知事、山田啓二京都府知事、さらに世帯数約1300という東京都奥多摩の坂本義次檜原村長らも出席、自治体経営の視点からITを積極的に活用することの重要性を指摘する発言が相次いだ。(ジャーナリスト 千葉利宏)

自治体経営上の重要性指摘

 今回の会議での発言を整理してみると、特に「情報公開・情報共有」と「人材作り・雇用」の2点に関するものが目立っていた。自治体の業務やサービスをIT化して効率性や利便性を高めるだけでなく、情報公開によって地域社会を活性化し、人材づくりによって仕事や雇用を生み出そうという思いは、自治体トップに共通しているのだろう。

「情報公開・情報共有」を実現するには、2つのポイントがある。1つは住民に対してきちんと情報提供が行われるようにするための「役所の風土改革」(片山鳥取県知事)、もう1つは住民に情報が伝達するようにするための「ポータルサイト整備」(梶原岐阜県知事)である。

 鳥取県では、環境問題に対応する狙いからペーパーレス化を可能にした予算編成システムを導入したが、そのシステムに蓄積された情報を公開することで予算編成過程を透明化。説明責任が明確になったことで、県職員の意識改革が進んだことが紹介された。議会とのやり取りもオープンにすることで根回しや談合を排除し、住民から県政に対するメールやそれに対する回答文も公開するようにした。岡山市でも、予算編成過程をオープンにしており、情報公開条例ですべての情報を無料で提供を受けることができることを明記した。これを実現するために文書管理システムによって基本的にすべての文書が自動的に公開される仕組みが構築されており、「県外からも地方自治の勉強をしている学生などから資料提供の要請がある」と、萩原市長も驚くほどの効果を生んでいる。

 「人材づくり・雇用」では、IT教育で国際競争力を増した北欧のケースなどを引き合いにして、その重要性が改めて強調された。IT人材がいなければ企業を誘致して雇用を生み出すことは難しいが、「仕事がなければ人材は育たない」(片山知事)のも確か。岐阜県では、フリーターを対象にIT教育を受けて合格すると就職口を世話する雇用保証型事業を実施、同じく若年層雇用が深刻な北海道でも「ジョブ・カフェ」をオープンするなどの対策を講じている。企業とのタイアップで教育事業に乗り出している自治体も多く、北海道がマイクロソフトと組んでスタートしたステラプロジェクトや、福岡県がサン・マイクロシステムズなどと共同でカリキュラムを作成して始めている高度IT人材育成事業などが紹介された。

 各自治体からは他にもさまざまな取り組みが紹介されたが、興味深かったのは京都府が進めている「観光都市KYOTOケイタイサポート計画」。外国人観光客に携帯電話を使って双方向の観光案内を実現しようという構想で、携帯のGPS(全地球測位システム)、機能を使って位置情報も提供する。紙の観光案内パンフレットに比べて大幅に利便性の向上が期待できる新しい仕組みとして、大いに注目されることになりそうだ。
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