情報化新時代 変わる地域社会

<情報化新時代 変わる地域社会>第19回 新潟県長岡市(上) ホストからC/Sシステムへ

2004/09/20 20:43

週刊BCN 2004年09月20日vol.1056掲載

 新潟県長岡市が新情報システムへの移行作業を開始した。長岡市は来年4月1日付で周辺4町1村を吸収合併するが、それに合わせて住民記録など基幹システムを、旧来のホストからクライアント/サーバー(C/S)システムへと切り替える。このプロジェクトを受注したNECでも、大量のシステムエンジニア(SE)を投入するなど、システム構築に万全を期している。(川井直樹)

新情報システムへの移行開始 プロジェクトはNECが受注

■開発費は約17億5000万円

 南北に長い新潟県の中央部、中越地方の中心都市が長岡市。現在の人口は約19万2000人。2005年4月1日には、周辺の越路町、中之島町、小国町、三島町、山古志村の4町1村と合併し、新しい長岡市として人口は約23万人に拡大する。

 長岡市は昨年度、合併を織り込んで、約15年にわたって使い続けた日立製作所製のホストコンピュータを、新たにC/Sシステムに置き換えることを計画。今年8月にはNECの受注が決まった。契約期間は、03年8月から06年8月までの3年間。まず最初に長岡市としての基幹システムの構築を完了し、その後、合併町村のデータ移行や電子自治体の基盤構築などと続いていく。

 今回の移行プロジェクトに関わる費用は全体で約17億5000万円と、地方都市の情報システム案件としては大きい。このうち約6億円は合併に備えたシステム構築部分で、残り約11億5000万円が、コンサルティングを含めた新システムへの移行のための開発費用となる。

 市町村合併のための情報システム統合だけでも、相当な困難と時間が伴うケースがほとんど。長岡市はそれに加えて新システムへの移行という、さらに手間のかかる作業まで盛り込んでしまった。

 金子淳一・長岡市企画部情報政策課課長は、「長岡市のシステムを移行させるために、これまでの業務を見直すことも必要になる」として、庁内各課に業務の見直しや手続きの簡素化を求めたという。

 これまでのスタイルで業務を行っていては、ホストを使っているのと何ら変わりはない。さらに、C/Sシステムへ移行するにあたって、パッケージを導入することにしており、開発期間を短縮するためには、なるべくカスタマイズを加えたくない。開発期間の短縮は費用もさることながら、合併期日までに間に合わせるための絶対条件となる。

 新システムに移行する業務の数は、合併関係の2項目を除いて22業務ある。「あらかじめカスタマイズしなくても済むように要求したが、それでも最初は各課から出たカスタマイズ項目は、合わせて790項目にもなった」と金子課長は笑う。

 そのままではパッケージを導入する意味もなくなる。「パッケージありき、という開発方針は変わらない。パッケージ活用で機能が強化される部分もある。各課と話し合いを行い590項目まで減らした」(金子課長)という。

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■150人のSEを投入

 今回、長岡市のリプレース案件はNECが受注に成功した。その勝因について、NEC長岡支店の手島浩臣主任は、「合併案件での実績や、当社のパッケージが評価された結果だ」と自信をみせる。しかし、新システムへの移行と合併が重なるだけに、NECの実績の中でも重要度は高い。

 赴任したばかりの荒木哲哉・長岡支店長も、「これまで以上にNECとしても力を入れている。投入するSEの数も150人と多く、当社のエース級ばかり」と語り、NECグループとして相当にリソースをかけているという。

 今回、NECが長岡市のシステム案件を受注した意味は、規模の大きさだけではない。新潟県中越地方の主要都市である柏崎市では、NECも資本参加している地元のシステムインテグレータ、柏崎情報開発センター(KASIX)が03─07年度の5年間、柏崎市の情報システムのアウトソーシングを受注している。また、同様にNECが出資している十日町市のオスポック(旧十日町ソフト開発)も、十日町市などの自治体システムを開発・運用している。

 今回、これらに加えて中越地方の中心都市である長岡市も、NECが手中に収めたことになる。「1次審査では10数社が提案していた。2次審査では当社ともう1社だけが提案し、受注に成功した」(NEC長岡支店の手島主任)という〝激戦〟を勝ち抜いた意味は大きいということだ。

 長岡市を中心とする合併では、地元の有力システムインテグレータであるBSNアイネットや、全国展開を図っているTKC、長野県に本社を置き新潟県の自治体システムでも実績の多い電算などがユーザーを失うことになった。

 合併だけではなく、それに合わせて実施するC/Sシステムへの移行という膨大な開発工程がある。そして、期間短縮のためにパッケージ活用をメインにしているとはいえ、開発期間は短い。新システムへの移行は、実質的にあと半年程度しかない。時間がない状況でも、「期間内で開発、検証は確実に終了させることができる」(荒木・NEC長岡支店長)と語る自信は、NEC全体で強力にバックアップしている証拠だろう。
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