変革セキュリティビジネス

<変革セキュリティビジネス>37.イージーシステムズジャパン

2004/09/27 16:18

週刊BCN 2004年09月27日vol.1057掲載

 CD-R/DVDメディアへの書き込みソフト開発・販売を主軸事業に置いていたイージーシステムズジャパン。だが、情報セキュリティ需要を見込み、セキュリティソフト開発を一気に加速している。

ファイル管理でデファクト目指す

 自社開発のDRM(デジタル著作権管理)技術を武器に、ファイル暗号化・管理ソフトだけで、セキュリティビジネスを事業化。幅広いジャンルの製品を開発・販売する計画はなく、「ファイル管理ソフト分野でデファクトスタンダード(事実上の標準)の地位確立」(松井信晃・DRMセキュリティグループ商品企画チームリーダー、セールスエンジニア)を標榜する。社員数約60人のうち、約10人の開発者を含めて30人を、このセキュリティビジネスに集中させている。

 デジタル音楽コンテンツの配信・課金システム開発に関わっていた過去から、独自のDRM技術を保有。2000年からコンテンツプロバイダなどに向けて、音声・映像ファイルの複製を禁止するソフトを、顧客ごとにカスタマイズして提供していたのがセキュリティビジネス参入の発端だ。だが、「顧客のシステムに組み込むためのカスタムソフトを作る必要があり、利益面で効率的なビジネスとは言い難かった」(松井リーダー)。

 そこで目をつけたのが個人ユーザーだ。最近1-2年間の個人情報漏えい事件で、個人のパソコンに格納するデータファイルに関しても、ファイル管理ソフトの需要が見込めると判断。03年にクライアント向けのファイル管理ソフト「イージーファイルセキュリティ」を提供開始した。ワードなどで作成したドキュメントファイルや画像ファイル、テキストファイルを暗号化し、閲覧者の制限や閲覧回数、利用期間などの制限を行うことで、社外への情報漏えいを防止する。今年4月にはバージョンアップ版を出荷開始した。

 これまで大手企業を中心に、約1万クライアントを出荷した実績を持つ。「個人情報漏えい対策のなかで、基礎的な対策となる」(松井リーダー)と位置づけており、来年4月1日からの個人情報保護法の施行での“特需”をにらみ、販売戦略に拍車をかける。今年5月からはサーバー内にあるデータに関しても暗号・管理可能なモデルを出荷し、ラインアップを拡充。クライアントパソコンとサーバーの両分野のファイル管理を行えるようにした。

 販売戦略では販売パートナー経由の間接販売を中心に販売していることから、製造業や金融業に強いパートナーと、各地方での地場のシステムインテグレータの協業を推進している。ファイルの暗号・管理ソフトは、IT資産管理と同様に内部情報漏えい対策のカギになる分野。開発が困難と言われるDRM技術を持っていることで、セキュリティ市場参入の遅れを挽回している。(木村剛士)
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