情報化新時代 変わる地域社会

<情報化新時代 変わる地域社会>第21回 三重県(上) 高速通信網を積極利用

2004/10/04 20:43

週刊BCN 2004年10月04日vol.1058掲載

 IT先進県として知られる三重県は昨年度から、他県に先駆けて整備したギガビット級の高速・大容量通信網を利用した「ネットビジネス支援事業」を開始した。ウェブサイトを立ち上げ商品を販売したり、ウェブアプリケーションを開発するベンチャー企業などに対し、事業資金を補助する。折角の通信網も県民に利用されないと意味がないという発想から生まれた事業だけに、地域振興の一環として着実に貢献し始めている。(谷畑良胤)

ネットビジネスで地域興し 主婦がベンチャー企業設立も

■IDCを09年まで無料開放

 山間部が多く、中小規模の町村が散在する三重県は、ADSLなど常時接続型の安価な通信インフラの普及が困難な環境にあった。そのため、三重県は2002年度、県内9社のケーブルテレビを取りまとめ、県全域に行き渡るケーブルテレビ(CATV)網を使用した1ギガビットの情報通信基幹ネットワーク「三重M-IX」を構築した。このCATV網は、02年3月までに世帯カバー率がほぼ100%に達している。この通信環境を積極的に活用しようと、三重県が03年度から開始したのが「ネットビジネス支援事業」である。

 三重M-IXは、第3セクターのサイバーウェイブジャパン(阿児町、油家正社長)のインターネットデータセンター(IDC)を活用して構築しており、県内の企業や団体などの利用を促そうと09年3月まで無料開放している。

 無料開放の期間中に、「地域コンテンツの充実、県内情報関連産業の育成、ネットワーク系IT企業の誘致を図り、県民の利便性を高め、ネット利用を促進したい」(村木信哉・三重県地域振興部志摩サイバーベースプロジェクト主査)と、ネットビジネス支援事業を予算化した。また、ネットビジネス支援事業では、進出、起業したネットベンチャー企業を数多く育成して成功へ導き、県民に通信インフラを利用して起業する意識を植え付けたいと考えている。

■立ち上げ資金を100%補助

 ネットビジネス支援事業の補助金は、03年度、04年度とも総額5500万円。補助対象となる企業は、三重県内に補助事業の対象となる事業所を構えている法人か、県内の企業と協業してネットビジネスを立ち上げる県外の法人。補助金交付決定日から2か月以内に法人格を取得して、三重県の無料開放ネットワークを使い、地域に特化したコンテンツを創出したり、創出を誘導する目的であることが条件だ。補助金は、ウェブサイトなどを立ち上げるために必要なサーバーやセキュリティインフラを整備するシステム構築費に充てられる。

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 応募するベンチャー企業にとって、三重県のネットビジネス支援事業の魅力は、ベンチャー企業であれば、県評価委員会の審査を経て採択された事業の立ち上げ資金が100%補助(一般企業の場合は補助率50%)される点。他県にも、同様の支援事業はあるが、「事業費に対するベンチャー企業への補助率はせいぜい50%。これを100%にしないと、ベンチャー企業は資金不足に陥り、事業が失敗する可能性がある」(村木主査)ことから、潤沢な資金提供を決断したという。

 03年度は、1件あたりの補助金500-3000万円で公募したところ、県外1件を含む24件の申請があった。このうち、県内のベンチャー企業2社と一般企業1社、県外のベンチャー企業1社の計4社が補助金対象に採択された。補助金交付4件のうち、3件はすでに事業化に漕ぎ着け、業績を上げつつある。

 一般企業の事業では、津市に本社を置き、「井村屋の肉まん」で有名な井村屋製菓(浅田剛夫社長)のネット販売サイト「JiAi(ジアイ)@植物性食品の店」が昨年10月にオープン。県内で栽培した野菜、穀類、豆などの植物性素材を利用した商品群「ジアイブランド」のネット上での全国販売を開始した。

 井村屋は、02年11月からジアイブランドで、野菜ブイヨンの販売を自社サイトで試験的に開始していたが、「三重県発のブランドとして育成したい」という目的から、補助金を申請。県は審査の結果、サイトの拡大に必要なシステム構築費を補助した。「安全な食への関心が高い女性を中心に評判を呼んでいる。最近は井村屋が東京都内にジアイブランドのアンテナショップを開設するまでになった」(村木主査)と喜んでいる。

 県内からの応募では、IT企業でアプリケーション開発の経験をもつ桑名市に住む主婦、水谷美保さんが補助金を受けて、「iCAP三重COARA」を設立した。このベンチャーの事業は2点。1つは、映像を簡単に投稿でき、容易にホームページを作成できる「メディア型コミュニティ・システム」と呼ぶツール。市民が地域コミュニティ用サイトを簡単に立ち上げられるよう〝主婦感覚〟で考えたものだ。

 もう1つも〝主婦の発想〟を生かした事業で、保育所や介護施設、病院などと家庭をつなぐ、双方向のASP(アプリケーションの期間貸し)型ビデオ日報システム「ビデオNIPPO」である。すでに、県内で導入を希望する保育所がいくつかあるという。

 ネットビジネス支援事業は、05年度までの3か年計画だが、04年度の応募数が倍近くまで伸びるなど評判が高まっている。このため、三重県は、さらに3か年程度、この事業を継続する検討を開始した。
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