拓け、中堅・中小企業市場 事例に見るSMB戦略

<拓け、中堅・中小企業市場 事例に見るSMB戦略>第26回 物流サイト運営会社のトラボックス編(3)

2004/10/11 16:18

週刊BCN 2004年10月11日vol.1059掲載

 全日本トラック協会によれば、国内の運送会社は約5万8000社。オンライン物流サイト「Tr@BOX.net(トラボックス・ドットネット)」には、このうち5.5%の3200社(荷主は1150社)が会員登録している。同サイトを運営するトラボックスの藤倉泰徳社長の推測によると、「運送会社のパソコン普及率は2割程度だろう。そのほとんどが、大手運送会社だ」という。

運送会社のIT化が絶対条件

 トラボックスは、荷主を含め6000社のサイト会員登録社数を当面の目標にしている。しかし、運送会社のパソコン普及率が2割程度では、どんなに努力しても、運送会社だけで登録可能な社数の上限は約1万2000社程度。このうち、半数近くを会員に獲得しなければ、目標数値に到達しない。そこで、製造業向け受発注支援サイト「NCネットワーク」を運営するエヌシーネットワーク、マイクロソフト、トラボックスの3社が協力して、「マウスだけでトラボックス・ドットネットを使うことができるので、パソコンを購入して、インターネットをつなげて、サイトを利用して欲しい」(トラボックスの藤倉社長)と、昨年11月から運送会社などを対象にした「キャラバン」を20か所で実施した。

 トラボックス側でも、サイトを魅力あるものにしようと、いろいろなコンテンツを用意し始めた。1つは、auのGPS(全地球測位システム)携帯電話を利用したサービス(1端末・月額1050円)。このサービスを使えば、自社トラックの位置や運行状況の確認、目的地までの距離計算などを会員ページで調べることができる。現在は、求荷求車情報との連動も開始した。

 当初は、「不況に喘ぐ運送会社の実情を考慮」(藤倉社長)して、無料の求荷求車情報欄を設けた。しかし、経営安定化を図るため年間4095円の定額制に固定し、荷主や運送会社の住所や連絡先まで見ることができるようにした。サービスを充実させたことで、「有料にしても会員獲得活動に支障は出ていない」(藤倉社長)と自信を見せる。

 トラボックスは今年に入り、同サイトを1つの運営モデルとして、全国5か所のトラック協会向けにASP(アプリケーションの期間貸し)型で提供を開始した。トラボックスがサービスを開始した当初のように、地域限定で求荷求車システムが運用されている。また、運送会社向けにウェブサイト構築の手伝いも開始。「ITを使えば、効率良く仕事を獲得できるはず。それを運送会社に分かって欲しい」と、藤倉社長の啓発活動は続いている。(谷畑良胤)
  • 1