息吹くXMLウェブサービス

<息吹くXMLウェブサービス>第2回 シーイーシー PCA「ドリーム21」と積極的な連携図る

2004/12/06 20:42

週刊BCN 2004年12月06日vol.1067掲載

 シーイーシー(CEC、宮原隆三社長)は、XMLウェブサービスをベースとした業務パッケージ間の連携を強化する。同社は、CRM(顧客情報管理)を中心とした業務パッケージ「ワンダーウェブ」を自社開発しており、すでに業務パッケージベンダーのピーシーエー(PCA、大炊良晴社長)のERP(統合基幹業務システム)パッケージとのXML連携を実現。今後はさらに他の業務パッケージとのXML連携を積極的に進める。(安藤章司●取材/文)

他の業務パッケージも視野に

■顧客情報などをシームレスに交換

 CECは、XMLウェブサービスに対応したマイクロソフトの「.NET」をベースにビジネスを推進する.NETビジネスフォーラム(松倉哲会長=東証コンピュータシステム社長)の運営委員の1社として、XMLウェブサービスをベースとしたビジネスを積極的に推進している。

 今年7月には、ワンダーウェブのCRM機能と、PCAが開発したERPパッケージ「PCAドリーム21」とのXMLをベースとしたデータ連携を実現した。ワンダーウェブの顧客情報と、PCAドリーム21の売上情報などがシームレスに交換できるようになったことで、より使い勝手のよいシステム構築が可能になった。

 ワンダーウェブのCRMの操作画面には、ERPのPCAドリーム21で管理されている顧客別の売り上げランキングや営業担当者別の売り上げランキング、売掛金の未回収などの各種情報を詳しく呼び出すことができる。

 ワンダーウェブのCRMと7月からPCAドリーム21のXML連携型で提案を進めている商談は今年7月からこれまで15件ほど。商談数は増える傾向にあり、今年度(2005年1月期)までに商談数が50件以上に達する見込みだ。

 商談では、既存のワンダーウェブユーザーにPCAドリーム21を売り込むケース、または既存のPCAドリーム21にワンダーウェブを売り込むケースに加え、どちらも納入していない顧客企業に新規でワンダーウェブとPCAドリーム21を売り込むケースの大きく分けて3つのケースがある。商談の傾向を見ると、これまで両製品の納入実績がない新規顧客が約半分を占める見通しで、顧客企業の反応は上々だという。

■利用企業の評価高い世界標準のXML

 反応がよい背景には、今回の連携がワンダーウェブとPCAドリーム21だけの閉じたデータ連携ではない点にある。顧客企業は、両社の製品がXMLウェブサービスという世界標準で今後普及が見込まれる方式に対応している点を評価するケースが多いという。顧客企業の多くは、今後の拡張計画のなかで、XMLウェブサービスに対応した他の業務システムとのデータ連携も視野に入れており、この方針に合致していることが評価に結びついているというわけだ。

 CECとPCAの業務パッケージ間の連携は、XMLウェブサービスが登場する以前の99年にさかのぼる。当時、CECのワンダーウェブの購入を検討していた顧客先から「ERPからデータを取り出せるようにしてほしい」という打診があった。この顧客が愛用していたERPがPCA製。CECがPCAにデータ連携を申し込んだことから両社の協力が始まった。

 当時は業務パッケージ同士を連携させる共通基盤がなかったため、PCAのパッケージソフトのデータベース構造などの情報を開示してもらう必要があった。パッケージベンダーは、こうした情報を通常は開示しない。そこで、機密保持契約を結ぶなどして、PCAに「理解してもらった」(溝道修司・CECソリューションビジネス本部WonderWebソリューション部部長)と、両社とも苦心したという。

 現在は、データベース構造や業務パッケージの中身まで踏み込まなくても異なる業務アプリケーション同士のデータ連携が可能となるXMLウェブサービスがある。CECでは「これを利用しない手はない」(同)と判断。まずは、長年、連携の実績があるPCA製のERPと.NETベースのXMLウェブサービスを使ったデータ連携を実現した。

 溝道部長は、「互いの業務アプリケーションが、最初から.NETなどXMLウェブサービスに対応していれば、データ連携にともなうコストは従来比で約10分の1で済む」と、XMLウェブサービスのコスト競争力の高さを指摘する。現在、CECでは、ワンダーウェブのCRM機能の部分の.NETをベースとしたXMLウェブサービスへの対応を完了させている。今後はCRM機能に続き、来年3月末までをめどに、ワンダーウェブのGIS(地理情報システム)やワークフロー機能のXMLウェブサービスへの対応を進める。

 ワンダーウェブは、CRM機能を主軸とした業務パッケージソフトだが、財務会計や販売管理などERP的な機能は、今のところ自社開発する計画はないという。XMLウェブサービスを活用することで、バックエンドからフロントエンドまでシームレスな業務システムが構築可能になり、必ずしもすべての業務システムを自社で開発する必要性がないからだ。

■フォーラムの会員増でソリューション拡大へ

 顧客からの要望がバックエンドからフロントエンドまで多岐にわたるケースでも、すでにXMLウェブサービスに対応しているERPやその他の業務システムと連携させることで、要望どおりのトータルな提案が可能になる。こうしたXMLウェブサービスの連携パートナーを決める上で重要な役割を果たすのが、CECが運営委員を務める.NETビジネスフォーラムである。

 現在、.NETビジネスフォーラムの会員数は約50社。これを早い段階で「200社程度まで拡大させる」と、.NETビジネスフォーラム事務局の下川和男・イースト専務取締役は方針を示す。参加社数が多ければ多いほど、顧客の要望に合致するソリューションを組み合わせやすいからだ。

 CECの溝道部長は、「会員各社が個別のXMLウェブサービスのビジネスを進めていくなかで、XMLウェブサービスの連携パートナーとなったベンダーを.NETビジネスフォーラムに加入してもらえるよう働きかけていくことが会員増に結びつく」と、XMLウェブサービスのソリューションの拡大に向けて、連携パートナーの増強に力を入れる。

 CECのワンダーウェブ関連の昨年度(04年1月期)の売り上げ実績は約10億円。XMLウェブサービスへの対応を積極的に進めることなどを通じて、06年度(07年1月期)は売上高30億円を目指す。

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