コンテンツビジネス新潮流

<コンテンツビジネス新潮流>6.劇空間を伝達するブロードバンドシアター

2004/12/06 16:18

週刊BCN 2004年12月06日vol.1067掲載

 今秋、楽天、ソフトバンクのプロ野球参入が大きな話題になった。こうしたIT企業が目指しているのは、プロ野球という日本で最も人気の高いスポーツを、インターネットコンテンツとして利用することだと言われている。(久保田 裕 社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)専務理事)

 これまでのテレビ放送だけではなく、インターネットでも配信すれば、福岡ダイエーホークスのファンは、東京にいても試合を見ることができるようになる。あるいは、テレビ放送圏内であっても、試合の途中で放送時間が終わってしまうなどを気にすることなく最後まで試合を見ることができるようになるだろう。

 同じ仕組みを使えば、例えば、高校野球などでも出身県の地方予選を遠隔地で見ることができるかもしれない。あるいは、テレビ放送が行われていないスポーツも対象になり得る。スタジアムやテレビ電波の届く範囲という距離は無関係になる。

 スポーツをはじめ演劇やコンサートなどテレビ放送の範囲では視聴者は少なくても、全国規模では見たいと思っている人は相当数に上るだろう。インターネットを使って、距離を超越するのである。

 また、複数のカメラで撮影した映像が配信され、それを視聴するユーザー自身が画面を切り替え、1人の選手だけを追い続けることもできるだろうし、カーレースなどで日本人選手のバトルばかりを見ることもできるだろう。HDDレコーダーなどで見られる追っかけ再生や、自分だけ見たいシーンをリプレイさせることも不可能ではなく、その番組やコンテンツを個人ユーザーが自ら再編集することもできるようになるかもしれない。

 実はすでに、こうした複数のカメラをユーザー自身が選択するという試みが、アナログな世界であった演劇でなされている。So-net(ソネット)のソニーコミュニケーションネットワークが制作しているブロードバンドシアターである。

 劇場で見れば普通の演劇だが、舞台に複数のカメラが仕込まれており、中には360度周囲を写すカメラもあり、様々なアングルからユーザーが選択して演劇を楽しめる。役者の視点から客席も写されるわけで、観客も覚悟がいる。まさに劇空間を伝達するシステムなのである。

 今後、演劇だけではなくコンサートや祭り、サッカーなどのスポーツにこのシステムを応用することもできるだろう。

 例えば、テレビ放送ではアップ画像が多く、ラグビーではラインなど全体が把握できない場合も多かったが、そんな不満も解消されるだろう。
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