息吹くXMLウェブサービス

<息吹くXMLウェブサービス>第3回 ナルボ 自社開発ソフトのシェア拡大狙う

2005/01/03 20:42

週刊BCN 2005年01月03日vol.1070掲載

 ソフト開発のナルボ(斉藤友男社長)は、業務アプリケーションソフトのウェブサービス対応を急ピッチで進めている。主力のグループウェアのウェブサービス対応を手始めに、受付システムや今年1月下旬に出荷予定のワークフローシステムのウェブサービス対応を進める。他社に先行してウェブサービスに対応することで、自社開発のパッケージソフトの売上拡大を狙う。(安藤章司●取材/文)

急ピッチで.NET対応を推進 先行者利益を最大化

■.NETフレームワークに 01年から対応表明

 ナルボが開発した業務アプリケーションソフトは、グループウェア「タイムスケジューラー.NET」と受付システム「なっちゃん2」の2本。今年1月下旬には、新たに開発したワークフローシステム「ドキュメントワークフロー」(仮称)の出荷を始める予定だ。

 同社は2001年に、ウェブサービスに対応したマイクロソフトの開発基盤「.NETフレームワーク」への対応を表明。以来、ウェブサービス対応の業務アプリケーションの開発を進めてきた。主力の「タイムスケジューラー.NET」は、03年10月にウェブサービス対応を済ませ、受付システムの「なっちゃん2」は、04年6月にウェブサービス対応を済ませた。

 ウェブサービスに対応したプラットフォーム.NETフレームワーク上での開発着手は、「国内のISV(独立系ソフトウェアベンダー)のなかで最も早期のグループに属する」(マイクロソフトの長井伸明・ディベロッパーマーケティング本部パートナーテクノロジー推進部部長)という。マイクロソフトと取り引きがあるISVのなかで、早い段階からウェブサービス対応アプリケーションの開発を手がけてきた実績が強みだ。

■受付システムとスケジューラーを連携

 ナルボでは、04年12月1日付でタイムスケジューラー.NETとなっちゃん2のウェブサービスを使ったデータ連携を実現した。

 受付システムのなっちゃん2は、来客が受付カウンターに設置したタブレットPCのディスプレイを操作して担当者を呼び出すシステムである。ディスプレイ上で視覚的に担当者名を表示し、内線電話で担当者を呼び出すより簡単に操作できる。また、入館証の自動発行や社内の担当者が来客の顔を映像で確認できる機能などを備えている。

 なっちゃん2とタイムスケジューラー.NETとが連携することで、来客時に対応する社内の担当者同士の連携がよりスムーズに行えるようになる。

 例えば、来客時に社内の複数のメンバーで対応する必要が生じた場合、まずタイムスケジューラー.NETで会議室の予約や一緒に対応する担当者のスケジュールを確定する。この時、タイムスケジューラ.NETに登録した来客情報は自動的になっちゃん2へ登録される。

 実際、来客があった時には、事前に登録しておいた来客名を受付カウンターのディスプレイに表示し、「○○様、お待ちしておりました」などと応対できる。同時にタイムスケジューラー.NETであらかじめ確定しておいたスケジュール通りに該当する社内担当者を呼び出す。

 これまで、こうしたアプリケーション同士の連携は「非常に工数のかかる仕事だった」(ナルボの斉藤社長)が、今回のなっちゃん2とタイムスケジューラー.NETとの連携は、わずか1週間の作業時間で連携を実現した。業務アプリケーションを開発する時、あらかじめウェブサービスに対応するように作っておけば、「従来の半分以下の工数」(同)で、アプリケーション間の連携を実現できるという。

 ウェブサービスでは、アプリケーションの“機能”を呼び出す仕組みで、原理的には非常にシンプル。今回の実践モデルでは、タイムスケジューラー.NETからなっちゃん2の“機能”を呼び出したに過ぎない。データベースを統合する必要もなく、アプリケーションを大幅に修正する必要もない。

■エクセルを使ったワークフローシステム

 他社製のアプリケーションでも「個々の機能がウェブサービスに対応していれば、当社製のウェブ対応アプリケーションと連携させることは非常に簡単」(同)と、他社製アプリケーションとの連携に前向きに取り組む。

 マイクロソフトでは、ウェブサービス対応を証明する「.NETコネクティッドロゴ」を発行しており、タイムスケジューラー.NETとなっちゃん2もすでにこのロゴを取得。今年1月下旬に出荷予定のワークフローシステム「ドキュメントワークフロー」もロゴを取得する準備を進めている。他社製アプリケーションがロゴを取得していれば、「極めて少ない工数でさまざまな“機能”を連携させたシステムを作り上げることができる」(同)と話す。

 ドキュメントワークフローは、表計算ソフトのエクセルファイルをベースとしたワークフローシステムである。技術的には、ワードファイルやPDFなどその他のファイルも扱える。だが、初版ではエクセルファイルの数字を読み取って決裁権限に基づく振り分けに活用していることから、エクセルファイルをベースとしたワークフローシステムに仕上げた。

 例えば、投資が必要なプロジェクトの稟議書で、予算要求額が50万円以上ならば部長以上へ、50万円以下ならば課長へそれぞれ決裁を振り分ける設定ができる。エクセルに書き込まれた金額を読み取って、必要な決裁ルートに乗せる仕組みだ。エクセルは、多くのビジネスマンが使い慣れているため、新しくワークフローソフトの操作を覚える必要がない。

 現段階では、ドキュメントワークフローとタイムスケジューラー.NET、なっちゃん2など自社アプリケーションとをどのように連携させるのかは未定。斉藤社長は、「ドキュメントワークフローの出荷後、顧客の要望を聞きながら、どのように連携させるか決める」と話す。標準でウェブサービスに対応しているため、新規の開発はほとんど発生せず、出荷後でも十分に対応できるウェブサービスの利点を最大限に利用する方針だ。実際、なっちゃん2も、出荷後に顧客の要望を聞きながらタイムスケジューラー.NETと連携させた。

 ナルボの昨年度(04年12月期)売上高の構成比は、自社開発のパッケージソフトが約2割、自社商材をベースとしたソフト開発が約8割となっている。自社開発のパッケージソフトのうち約8割がアプリケーション開発者向けのコンポーネント(ソフトウェアの部品)の売り上げで、タイムスケジューラー.NETなど業務アプリケーションの売上高は約2割。

 今年度は、主力業務アプリケーションのいち早いウェブサービスへの対応を他社との差別化の武器として事業拡大に力を入れる。

(協力:.NETビジネスフォーラム)

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