コンテンツビジネス新潮流

<コンテンツビジネス新潮流>11.ワンソース・マルチユース

2005/01/17 16:18

週刊BCN 2005年01月17日vol.1072掲載

 コンテンツビジネスにおいて、ユーザーとの接点の1つとして最近勢力が増しているのにMPSがある。MPSとは、CD、DVD、ゲーム、書籍など様々なパッケージを扱うマルチパッケージストアのことである。ここでは、マルチパッケージと同時に、セル、中古、レンタルなど様々な形態で扱われる。(久保田 裕 社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)専務理事)

 コンテンツビジネスにおいては、ワンソース・マルチユースの考え方が不可欠であることはこの欄でも何度か触れた。

 この、ワンソース・マルチユースにおいて、MPSは存在感を増してきている。特に地方では、映画館をはじめエンターテインメント施設が限られており、MPSは重要なチャネルになってきている。

 ユーザーの購買動向を示すデータからは、中古・レンタルと、セル商品が競合するとは必ずしも言い切れないとするデータが背景にあるようで、実際、MPSは地方への進出を積極的に行っている。

 ACCS設立以来、会員の多数を占めるゲームソフトメーカーとビジネスソフトメーカーは、中古やレンタルには拒否反応が強い。

 実際、ACCSは、中古ソフトの販売業者や無許諾レンタルソフトの経営業者と戦ってきた歴史がある。

 著作権法においても、許可のないレンタルは違法であり、もちろん、今後も違法な行為とは戦っていくが、一方で、メーカーと流通側で話し合うことによって、マルチユースの道が開けないだろうか。

 絶対的な必要条件は、コンテンツクリエイターであるメーカーの収益となることである。その上で、収益性を高めるためのワンソース・マルチユースの実現に必要なのは、新しい流通と契約である。

 音楽業界においては、CDの売り上げが減少する一方、ネット配信や、携帯電話の着メロ、着歌は急増している。これらの新しい流通には、新しい技術が必要となろう。新しい契約にも、それを担保するための技術が必要である。

 その上で、メーカーと流通をつなぎ、制作から販売などすべてのビジネスを結びつける一気通貫の仕組みが必要だろう。その時、それらをコントロールするプロデューサーの役割はより大きくなる。

 インフラを支える新しい技術としてのソフトウェア、コンテンツとしてのソフトウェア、いずれにせよ2005年は、著作権法にプログラムに関する条項が盛り込まれてから20年が経つ。これまでの枠にはないビジネスの仕組みにチャレンジする時代が到来した。
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