息吹くXMLウェブサービス

<息吹くXMLウェブサービス>第4回 OSK 販売チャネル開拓に貢献

2005/02/07 20:42

週刊BCN 2005年02月07日vol.1075掲載

 ソフト開発ベンダーのOSK(原田要市社長)は、自社製品をいち早くXMLウェブサービスへ対応させることで、新規販売チャネルの開拓に結びつけている。XMLウェブサービスのインタフェースを持っている点が販売パートナーから高く評価され、すでに導入事例も出始めている。(安藤章司●取材/文)

パートナーから高い評価 低コストで業務アプリをつなぐ

■既存システムと効率よく連携

 OSKは、自社開発のオリジナル商材として、ワークフローシステムやポータルシステム、文書管理システムなどを統合した「イーバリュー」シリーズを市場に投入している。親会社である大塚商会を経由した販売チャネルに加えて、グループ企業以外の新しい販売チャネル経由での販売にも力を入れている。

 グループ以外の新規販売チャネルとなるのは、システムインテグレータやシステムベンダーのほか、ERP(統合基幹業務システム)ベンダーなど。これら販売パートナーの多くは、すでに自社オリジナルの業務アプリケーションや特定ベンダーの商材を取り扱っている。また、納入先の顧客企業でも、何らかの情報システムが稼働している。

 こうした既存の業務システムと最も効率よく低コストで連携させるためのインタフェースとして重視しているのがXMLウェブサービスだ。

 これまでは、業務アプリケーション同士の連携は、専用のインタフェースの開発が必要だった。専用インタフェースの開発には時間やコストがかかり、納入先の顧客企業からも敬遠される。しかし、XMLウェブサービスという業界標準のインタフェースをお互いに用意することで、業務アプリケーション同士の連携は飛躍的に容易になった。顧客企業のなかには、XMLウェブサービスの将来の拡張性を見込んで、自社の業務アプリケーションにXMLウェブサービスのインタフェースを新しく加える動きも出てきている。

 一方、システムインテグレータなどの売り手の立場から見ても、既存の取り扱い商材のなかでXMLウェブサービスに対応している製品との連携が可能になるため、イーバリューシリーズを新規取り扱い商材のメニューのなかに加えやすい。XMLウェブサービスへの対応は「新しい販売チャネルの開拓にも貢献しており、今後も対応を推進していく」(OSKの立田一・ソリューションセンターEIPソリューション課スペシャリスト)方針だ。

■拡張性と柔軟性が高い「粗結合」方式

 従来は、業務アプリケーション同士の専用インタフェースを開発して、それぞれを連携させていた。この方式は、業務アプリケーション同士の密接な結合を実現できるため、一般に「密結合」方式と呼ばれている。これに対して、XMLウェブサービスは、インタフェースさえあれば、どの業務アプリケーションとも連携できるため、「緩やかで拡張性、柔軟性のある結合」という意味で「粗結合」方式と呼ばれている。

 イーバリューシリーズのなかで、ワークフローシステム「アドバンスフロー」は、XMLウェブサービスへの対応が進んでいる製品の1つだ。アドバンスフローのXMLウェブサービスのインタフェースを使った実際のシステム構築事例も出始めている。

 ある顧客企業では、消耗品などを一括して発注できる「購買ポータル」システムを導入していた。この企業で、購入額が5万円を超えるものについては、上司の承認を得る仕組みの導入を検討していたところ、XMLウェブサービスに標準で対応しているアドバンスフローが選択肢として上がってきた。

 購買ポータルで、購買額が5万円を超えるときに、XMLウェブサービスのインタフェースを使って、アドバンスフローを呼び出す仕組みを提案したところ受け入れられて導入が決まった。早ければ今年4月にも稼動する予定だ。

 これにより、購買金額が5万円を超えたときは、購買ポータルの操作画面上からアドバンスフローを自動的に呼び出し、上長へ購買を申請できるようになる。もし連携していなかったら、購買ポータルからワークフローへと業務アプリケーションを切り替える作業が発生し、作業効率や使い勝手が悪い。低コストで業務アプリケーション同士を連携させ、操作性を大幅に向上させた利点は大きい。

 この事例におけるXMLウェブサービスの主なインタフェースは、購買ポータルからアドバンスフローへの「新規申請」と「承認」「否決」の3つ。ワークフローの基本的な機能を呼び出す仕組みに過ぎないが、もし、標準のインタフェースがなければ「大がかりな開発が必要だった」(立田スペシャリスト)と振り返る。

 アドバンスフローの機能は、非常に高度で、すべての機能にXMLウェブサービスのインタフェースをつくると「1000種類近くになり現実的でない」(同)と、当面は機能を絞り込んで連携を進める。顧客企業側からも、複雑な連携ではなく、まずは基本的な機能連携を求められるケースが多く、「顧客の要望を聞きながら、必要なインタフェースから開発していく」(同)方針を示す。

■バージョンアップなどの環境変化にも強い

 顧客企業に加えて、販売パートナーの反応も上々だという。XMLウェブサービスに標準で対応していると話せば、システムインテグレータやシステムベンダーなど販売パートナーの「反応が変わってくる」(羽山祥樹・アライアンスビジネス推進部アライアンス推進課)と、新規販売チャネルの拡大に手応えを覚える。

 異なる業務システム同士を連携させるうえで、重要なのは、バージョンアップ時の対応である。販売パートナーが持つ業務アプリケーションとOSKのイーバリューとを永続的に連携させていくには、双方がバージョンアップしたときでも、引き続き連携を維持させる必要がある。業界標準のXMLウェブサービスがインタフェースになっていれば、「バージョンアップした後でも連携を維持しやすい」(同)と、業界標準のインタフェースの強みを訴求する。

 また、XMLウェブサービスは、そもそも「緩やかで拡張性、柔軟性のある結合であるため、バージョンアップなどの環境変化に強い」(立田スペシャリスト)と、環境適応力の強さを指摘する。

 OSKでは、今後もXMLウェブサービスのインタフェース拡充をベースとしてた他社業務アプリケーションとの連携、システムベンダーとのアライアンスの強化、新規販売チャネルの拡大に力を入れていく方針だ。
(協力:.NETビジネスフォーラム)
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