情報化新時代 変わる地域社会

<情報化新時代 変わる地域社会>第39回 北海道函館市 函館市、周辺4町村と合併

2005/02/14 20:43

週刊BCN 2005年02月14日vol.1076掲載

 函館市は2004年12月1日付で周辺4町村と合併した。情報システムの統合は膨大な作業量になったが、函館市をはじめ関係する4町村の主な業務システムがNEC系のシステムであったため、作業はおおむね順調に進んだ。函館市では情報システムの統合により、システム維持管理費の大幅圧縮を狙う。(安藤章司)

情報システムの維持費圧縮を進める 05年度から電子自治体の構築検討に着手

■NECのメインフレームに統合

 新生・函館市は、旧函館市の人口約28万人と周辺4町村の人口約2万人とを合わせて約30万人になった。周辺4町村の人口に比べて、旧函館市の人口が大きいことなどから、合併に伴う情報システムの統合では、住民基本台帳や税務システムなどの主なシステムを函館市のメインフレームに統合する方式が採られた。

 情報システムの統合作業は、合併を検討する任意合併協議会が立ち上がる直前の2003年5月頃から準備を始めた。同年9月には、合併特例法に基づく合併協議会を設置するタイミングで約1000万円の予算を投じて、情報システムの統合に向けたより具体的な調査を始めた。前段階の準備は周到に行っていたものの、合併する5市町村の議会で合併関連議案を議決したのは翌04年6月だったため、作業に着手したのは実質この時期からになった。

 合併当日の12月1日は水曜日で前日の11月30日は火曜日。両日ともシステムは合併前の通常業務で稼動している。通常の業務が完全に終了してから夜間にシステムの統合作業を行い、翌日は朝から平常通り動かさなければならない。

 函館市は合併で人口が約2万人増える。そのためシステムにかかる負荷が増大するのは必至。しかも、統合後の稼働日は平日だ。万が一、不具合が出たときには、業務に多大な支障が出る。

 ただ、統合作業に有利な条件もあった。旧函館市の主要な情報システムはNECのメインフレームをベースに運用されていた。また、周辺4町村の主な情報システムもNECのシステムを使っていた。「かなりの手直しは必要だったが、同じ系列のシステムなので、全く異なるシステムよりは統合作業がスムーズに進んだ」(川浪幸一・函館市総務部情報システム課課長)と、主にNECのシステムだったことが統合作業を軽減させたと話す。

 実質的な統合作業は04年6-11月末までの半年しかない。この短い期間で、合併直後から必要になる37業務分の情報システムの統合作業を済ませ、残りは年度末など当該業務が発生するタイミングまでに統合作業を済ませるスケジュールを組んだ。これら情報システムの統合にかかる費用は8億円弱。04年度の補正予算として計上した。

 情報システムの統合では多額の予算を投じたが、函館市では、合併により情報システムの維持運用費が圧縮できると予測している。函館市の03年度の情報システム関連の維持運用費は年間約4億5000万円で、同時期の4町村の費用は同約7800万円。単純に合算すれば約5億2800万円になるが、システム統合と効率的な運用で「維持運用費は減らせる」(佐藤賢一・函館市総務部情報システム課情報処理係長)と削減に意欲を示す。

■オープン系システムも視野に

 函館市の試算では、5市町村の情報システムの年間維持運用費の合計約5億2800万円を基準として、3年後の07年度までに年間3300万円ほど削減できるとしている。過年度の処理など、統合後の情報システムと並行して動かさなければならない旧市町村の情報システムが残るため、一気に削減はできないものの、毎年、着実に維持運用費を圧縮していく計画だ。

 過年度分の処理の影響が薄らぐ2010年頃には、旧函館市の年間維持運用費を4億5000万円程度には圧縮できる可能性があると予測する。厳しい財政状況が続くなか、これまで情報システムの維持運用費は重い負担だった。今回の削減計画は市の財政改善に貢献するものとして期待されている。

 しかし、一部には「維持運用費の高いメインフレームから特定ベンダーに依存しないオープン系のシステムへ移行しないと、抜本的な維持運用費の削減に結びつかないのではないか」(関係者)という意見もある。メインフレームでは、特定ベンダーおよび系列のシステムインテグレータと固定的な取り引きが発生しやすく、市場競争の原理が働きにくいケースもある。

 函館市では、この1年余りの間、「合併による情報システムの統合を成功させるためだけに神経を集中してきた」(有澤正敏・函館市総務部情報システム課主査)ことから、メインフレームのオープン化の具体的な検討作業には着手できていない。今後は、オープン化を成し遂げるための初期投資額、維持運用費の削減までにかかる年数、システムの安定性、堅牢性などを研究していく。

 すでに、市のホームページや電子メールなど、インターネット関連のサーバーについては、03年11月、Linuxをベースとしたシステムに刷新した。

 また、これまでほとんど手つかずだった電子自治体の実現に向けたシステム構築の検討にも05年度以降に着手する。さらに07年度末までには電子自治体も含めた地域情報化計画を策定する。財政面は依然として厳しい局面が続く見込みで、情報システム関連にどこまで予算をつけることができるのかは不透明な状態。函館市では、最小限の投資で、住民サービスを大幅に向上できるよう、情報システムを積極的に活用していく方針だ。
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