コンピュータ流通の光と影 PART IX

<コンピュータ流通の光と影 PART IX>拡がれ、日本のソフトウェアビジネス 第4回 関西編(1)

2005/04/25 16:05

週刊BCN 2005年04月25日vol.1086掲載

 大手メーカーが地域戦略を強化するなかで課題としているのが、地方別の需要環境のバラツキをいかに平準化していくかだ。ソフトウェアビジネスは首都圏集中型で、大阪を中心とした関西でも受注環境は明るいとは言えない。「大手企業も多く需要はあるが、利益的には厳しい」(長屋亙勇・富士通経営執行役常務公共ソリューションビジネスグループ長)状況は、他のシステムベンダーも共通だろう。大手ベンダーにとっては、企業や自治体といった地域の顧客やパートナー企業の存在は無視できない。特に大阪を中心とした関西ならば、それなりの規模と体制を求められるのは当然だ。(光と影PART IX・特別取材班)

SIビジネス拡大で地方再編 関西、利益面で厳しい状況続く

■地域SE会社のパッケージを全国展開へ

 NECは国内のSI(システムインテグレーション)部門を、今年度からNECソフトを中心として全体をバーチャル組織であるBU(ビジネスユニット)で括る「NECソリューショングループビジネスユニット」とした。6月1日付でNECソフト(池原憲二社長)と大阪に本社のあるNECシステムテクノロジー(高橋利通社長)がNEC本体の100%子会社となる予定で、BUは4月1日付でスタートしている。今回の改革で、NECシステムテクノロジーはソフト開発を担当する「NECソフトウェア開発グループビジネスユニット」となる。

 NECソリューショングループBUは、「中堅・中小企業(SMB)などをはじめとして地域のシステムニーズを獲得する」(池原NECソフト社長)ことが目的。そのため、地域のSE(システムエンジニアリング)拠点であるNEC子会社のNECソフトウェア北海道、同東北、同北陸、同中部、同九州もこのBUの中に組み込まれる。

 こうしたBUを構築した背景について池原NECソフト社長は、「これまで地域SE会社は、どうしても地域のビジネスに偏っていた。優れたパッケージを開発しながらも資金不足で中途半端な製品となったり、全国展開できなかったりして、無駄にしていたものもある」ことを一例に挙げる。こうした要因を受けて、「BUを構成することで、その中のSE会社が開発したパッケージなどを全国展開できるようになる。また、そうしたパッケージがあれば開発投資する環境ができる」と語る。

 全国をBUとして一元化することができれば、地域格差を吸収することも出来る目論見がある。

 富士通は、2003年4月に当時北海道に2つあったSE子会社を合併し、富士通北海道システムズを設立した。これに続き、04年7月には東北3社を統合した富士通東北システムズ、10月には四国4社を合併し富士通四国システムズ、12月には中国地方3社を富士通中国システムズに統合するなど、矢継ぎ早に地域SE会社の再編を進めている。

 その基本となるのが、全国を9つのブロックに分け、各地に地域営業本部を置く体制。各ブロックの支社長が地域営業本部長となり、その地区のSE会社の社長が地域営業副本部長を務める体制で統一している。

 関西の場合は、関西支社長が営業本部長となり、富士通関西システムズの社長が副本部長を務めることになる。

 富士通の長屋常務によれば、「再編はその途上にある。地元企業が出資するなどの資本構成で、再編に時間がかかるところもある」という。

 しかし、地域営業を重視する姿勢が変わるわけではない。四国のように香川、徳島、愛媛、高知の各県に地域SE会社があって、富士通四国システムズに統合されたが、各県の拠点はそのまま活動している。「自治体をはじめとして地域密着を求める顧客は少なくない。そのためには、各県の開発拠点は残さざるを得ない」(長屋常務)という面もある。

 もっとも、四国の各県にあったSE会社を1社に統合したことで開発リソースは拡大し、新たな機能も期待できるようになった。それが、「関西のバックアップ機能」(長屋常務)だ。

 東京、名古屋、大阪、九州は、各SE会社の売上高の「70-80%が地域のニーズで占めている。だが、それ以外の地方は、地域ニーズが40-50%程度に過ぎない」という地域格差がある。そんななかで、関西の需要について長屋常務は、「首都圏と関西の格差は大きい。しかもニーズは高まっているが利益的には厳しい」という。

 「金融をはじめとしたビッグプロジェクトはどうしても首都圏集中型になってしまう」(林雅博・日立製作所執行役常務関西支社長)というように、首都圏のソフトビジネスは拡大している。これに反して、関西だけでなく、その他の地方のソフトビジネスはシュリンクしていく一方だ。

■共通のテーマは「より多くの企業を攻める」

 日立は金融や公共ソリューションのSI担当部門は東京に集中させ、地方については製造・流通分野の傘下に置く体制だ。

 同社は03年12月に東北、中国、四国のSE拠点に製造・流通営業部門を集約し、地域対応の営業力を集中させる改革を行った。「金融や公共のソリューションは東京集中の中央統制型にする。その一方で、製造・流通は地域ビジネスを重視する」(佐久間嘉一郎・日立製作所産業・流通システム事業部事業部長)体制としたわけだ。

 関西地区については、日立製作所の関西支社に加え、グループ会社の日立システム&サービスの関西支社がカバーする体制だ。

 地域対応の営業力強化という点では、「年商500億円以下のSMB(中堅・中小企業)などを地域会社はターゲットにする」(佐久間事業部長)ことを目的としており、そのために佐久間事業部長は、「これまでSEと営業の2人で顧客対応をしていたが、それでは重過ぎる。地域の営業を強化するためには1人ひとりが行動し、より多くの企業を攻める体制にしなければならない」と語る。

 これは首都圏でも関西でも、その他の地方でも共通のテーマとなっている。

 大手メーカーの地域担当者の取材では、「地域的に見れば北海道や東北は厳しい」という点で景況感は一致する。また、営業や開発を含め、地方のSI事業強化については関西もその他の地域と同様の扱いのように感じた。

 次回よりIT関連企業各社の関西拠点でのビジネス動向のリポートに加え、さらに細かく関西の各府県別に大手ベンダーの拠点や地元SI(システムインテグレータ)などの動向をまとめていくことにする。
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