“ライブドア騒動”から垣間見える 2011年 ネットをTVが流れる日

<“ライブドア騒動”から垣間見える 2011年 ネットをTVが流れる日>2.テレビ局という奇異な業界(1)

2005/05/16 16:04

週刊BCN 2005年05月16日vol.1088掲載

 ライブドア騒動のおかげで、「テレビ局」の存在がかつてないほど社会の注目を集めた。だが、騒動が終わってしまえば、多くの人はいつも通り、テレビ局が放映する番組を漫然と受け入れる日常に戻っている。

 この連載の目的の1つは、インターネットが技術的にテレビの伝送路となり得るかを検証することだが、伝送路を利用する主体はテレビ局である(既存局だけとは限らないが)。

 何げなく日常的に接しているテレビ局とは実際、どのような存在なのか、連載の最初に確認しておいた方がよいだろう。

 主なテレビ局と言えば、全国をカバーする公共放送のNHKと在京民放キー5局(日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日、テレビ東京)。各地方にはそれぞれ地方局があるが、いずれも民放キー5局の系列下にある。

 一応、省令による「メディア集中排除原則」が生きており、資本力のある民放キー5局と言えど、1つの地方局への出資は20%未満に制限されている。

 ただ、資本力の弱い地方局は、地上デジタル放送への投資負担に耐えきれず、放送業界では出資制限の緩和が叫ばれている。実態としても、地方局が単独で放送事業が成り立たない以上、系列の意味は重いものがある。

 そして民放キー5局は、大手新聞社と資本関係がある(TBSと毎日新聞は過去の資本関係に基づく友好関係)。ビデオジャーナリストの神保哲生氏などが、「日本のメディアはクロスオーナーシップによって歪められている」と指摘するところだ。

 1つの資本が言論機関として圧倒的な力を持つテレビ局と大手新聞社の両方を持つ。その資本関係は地方局の系列化を通じて、全国津々浦々まで敷延してゆく(中日新聞など地方有力紙も独自に地元局とクロスオーナーシップを結んでいる)。

 諸外国でクロスオーナーシップが敬遠されるのは、前述したメディア集中排除の精神からだ。1つの資本が言論機関として力を持ちすぎ、テレビと新聞がお互いをチェックできなくなる。

 メディア上では日本企業特有の商習慣として株の持ち合いが批判的に語られるが、そのメディアこそ、きめ細かく株を持ち合い、お互いに批判対象にされない特別な関係になっている。(坂口正憲(ジャーナリスト))
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