“ライブドア騒動”から垣間見える 2011年 ネットをTVが流れる日

<“ライブドア騒動”から垣間見える 2011年 ネットをTVが流れる日>4.ネットで海を渡るテレビ

2005/05/30 16:04

週刊BCN 2005年05月30日vol.1090掲載

 この4月、元アスキー社長の西和彦氏(現・尚美学園大学教授)などによって設立された「情報通信政策フォーラム(ICPF)」は、その名前の通り、「民間の立場から情報通信政策についてオープンに議論する場」である。

 同フォーラムが5月中旬に行ったセミナーで興味深い講演があった。テレビパソコンのハウジングサービス「録画ネット」を手掛けるエフエービジョンの原田昌信氏が、同社とNHK、民放キー5局との間に起こった係争について語ったものだ。

 「テレビパソコンのハウジングサービス」と言ってもピンとこないかもしれないが、その仕組みはサーバーハウジングと同じ。ユーザーは同社に預けたテレビパソコンへインターネット経由で接続、テレビ番組の録画操作を行い、録画されたデータを手元のパソコンに転送、視聴する。

 誰が利用するかと言えば、通常は日本のテレビ番組を視聴できない海外に住む日本人である。

 ただ、録画ネットはNHKと民放キー5局から、「事業として番組を録画、配信している」と著作隣接権侵害を指摘された。これに対してエフエービジョンは、「我々が手掛けているのはハウジングサービス。録画・転送する主体はユーザー」と主張した。

 結果から言えば、放送局側の申し立てを受けた東京地裁は昨年10月、サービス停止の仮処分決定を下している。

 同社は現在、録画可能な個人向けサーバーを売り切り、ユーザー自身がそれを国内の実家などに設置、海外から録画操作を行うという仕組みを提供しているが、録画ネットほどの魅力がないのは自明だろう。

 法律抜きに考えれば、海外在住邦人が日本のテレビ番組を手軽に楽しむ方法として録画ネットは良くできたサービスだ。

 放送局側にとっても視聴者が増えること自体は何ら不利益ではないはず(同社はサービス開始当初からNHKに対して、受信料支払いを申し入れている)。

 原田氏は講演で、「インターネットの発達で私的複製の領域が広がっている」と、海外で日本のテレビ番組を視聴できるのも時代の流れと指摘している。

 次号から、ネットがテレビ伝送路として、どれぐらいの可能性を秘めているのかを見ていく。(坂口正憲(ジャーナリスト))
  • 1