息吹くXMLウェブサービス

<息吹くXMLウェブサービス>第8回(最終回) NEC データベース統合型アプリ基盤 「GdFrame」の拡販を本格化

2005/06/06 20:42

週刊BCN 2005年06月06日vol.1091掲載

 NEC(金杉明信社長)は、データベース統合型アプリケーション基盤「GdFrame(ジー・ディー・フレーム)」の拡販を本格化させる。生産現場から営業部門まで幅広い業務アプリケーションの基盤として機能する。XMLウェブサービスの接続口も備えており、既存の業務アプリケーションとの連携も容易に実現できる。年間10セットの販売を見込んでおり、2005年度(06年3月期)から07年度(08年3月期)までの3年間でシステムインテグレーション(SI)などの関連ビジネスを含めて100億円規模の売り上げを見込む。(安藤章司●取材/文)

3年間で売り上げ100億円目指す

■「デマンド・サプライ」方式で、情報の流れを2系統に

 ジー・ディー・フレームは、「デマンド」と「サプライ」の2系統に情報の流れを分類し、これに「誰が、誰に、何を、いくつ…」など5W1H方式で統一したデータベース書式を組み合わせることで、生産現場から営業部門まで幅広い業務アプリケーションに対応したデータベース統合型のアプリケーション基盤である。

 NEC内部の情報システムのあり方を研究する過程で、「デマンド・サプライ方式」の分類法や、「5W1H方式」のデータベース書式を考案。99年に初期システムを開発し、04年9月にジー・ディー・フレームとしての販売に漕ぎ着けた。これまではNECグループによる直接販売が中心だったが、今年度(06年3月期)下期をめどにシステムインテグレータ(SI)などの販売チャネルを通じた販売に乗り出す。

 ジー・ディー・フレームは、データベース部分にマイクロソフトの「SQLサーバー」を使い、アプリケーションサーバー部分に「.NETフレームワーク」を採用した。既存の業務アプリケーションやパッケージソフトとの連携はXMLウェブサービスの接続口を使うことで実現している。ウィンドウズアプリケーションのアクセスやJavaなど他のシステムと連携できる。

 デマンド・サプライ方式では、要求・指示を「デマンド」と定義し、実績報告をサプライと定義する。例えば、業務のなかでは、売り掛け、受注残、製造仕掛かり、未納入など、製品の状態や会計上の区分けによってさまざまな名称が使われている。NECでは、業務を見直す過程で、「これらの名称が指す本質的な意味はどれも同じであることが多い」(木村浩人・ソフトウェアエンジニアリング本部シニアマネージャー)ことを発見。これら業務用語をすべて「デマンド」か「サプライ」の2種類に分けて定義することで、情報システムの簡素化に成功した。

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■データベースの書式を、5W1H方式に統一

 データベースの書式も統一した。すべてのデマンド・サプライで必要な情報を洗い出した結果、「誰が、誰に、何を、いくつ、いつまで、いくらで」などと、5W1Hを業務用に手直しした方式でデータベースの書式を統一できることを突き止めた。データベースの書式は、「デマンド」と「サプライ」、添付書類などを処理する「拡張プロパティ」の3つに分けて、これ以外はつくらない。こうした規格化により、業務アプリケーション別に分散していたデータベースを統合し、ジー・ディー・フレームの基礎をつくった。

 NECがこうした業務アプリケーション基盤の研究に着手したのは、自らの業務改革を推進する理由から。生産ラインでの大量生産方式から、少量多品種の生産に対応した屋台方式やセル方式などに変わったり、かんばん方式を導入したり、見込み生産が受注生産に変わるなど、業務の流れが大きく変わった。経営トップからは次々と新しい方針が打ち出されるものの、生産現場など事業部で使っている情報システムでは対応しきれず、業務改革に予想以上の時間とコストがかかるケースもあった。

 業務フローを変えようとすれば、業務で使うアプリケーション別に分かれているデータベースの整合性の確保が課題となった。業務の変更箇所にともなう情報システムの変更点を洗い出し、データベースの統廃合をするには、情報システムの仕様そのものを解析しなければならず、作業が完了するまで数か月を要することもある。

 生産性を高めるために情報システムを導入しているにも関わらず、ビジネスモデルや市場が大きく変化するなかで、逆に情報システムがビジネスの足かせになりかねない状況だった。

 こうした問題を解決するために、すべてのトランザクションを「デマンド」と「サプライ」の2つの流れに整理し、データベースの書式を5W1H方式に統一した。デマンド・サプライ方式で情報の流れを定義し、システム全体を構造化するモデリング作業を標準化し、業務アプリケーションが使うデータベースを統一することで、ビジネスモデルの変化が起きても柔軟・迅速に対応することが可能になった。

 ジー・ディー・フレーム上に構築した業務アプリケーションならば、従来型のデータベースが異なる業務アプリケーション同士を統合するのに比べて、最大で「3分の1の工数と時間で統廃合が可能」(同)と大幅なコスト削減を達成できる。

■営業部門や流通業にも展開

 こうしたデータベース統合型のアプリケーション基盤の研究は、当初、通信機器などを製造するNECの事業所をモデルに開発された。だが、開発が進むにつれて、「生産工場を持つ製造業だけでなく、受発注業務を行う営業部門や流通業などにも展開できる」(同)ことが判明。これまで、NECグループ内の約20か所の生産や営業を担当する事業部に納入し、その有用性を実証してきた。NECグループ以外にも、先行事例として5社に納入した実績を持つ。

 データベースと統合したフレームワーク機能は、主要なERP(統合基幹業務システム)パッケージでも実現されているケースが多い。ただし、すべての業務で既存のパッケージが適応できるわけではなく、競合他社との競争優位性を保つために、自社のノウハウを生かしたシステムを開発したいとする顧客企業の需要は根強くある。

 今後は、生産管理や販売管理などの分野で個別に開発するシステムをターゲットとしてジー・ディー・フレームの拡販を本格化させる。NECグループ外に向けて年間10セットの販売を見込んでおり、今年度から07年度までの3年間で、コンサルティングやSIなど関連ビジネスも含めて100億円規模の売り上げを見込む。(協力:.NETビジネスフォーラム)
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