大遊泳時代

<大遊泳時代>第74回 出版文化のマルチ展開

2005/06/27 16:18

週刊BCN 2005年06月27日vol.1094掲載

松下電器産業 役員 前川洋一郎

 営業マンの若い頃、セールス商談で話題づくりに困って、新しいサマリーマガジンのビジネスを創業した京都のパーソナルブレーンの橋本忠明社長に出版業界の動向をうかがった。

 初対面、セールスの時、いつもゴルフ・マージャン・カラオケでは話題が続かない。そのような時、意外と受けるというか、のってくるのが「本」の話題という。

 30─40代の管理職、専門職、中小企業主は、仕事にも家庭にも付き合いにも忙しくて、本離れをしており、かえって本の話題に飢えているという。

 そこで、得意先の部長・課長に話題の本、流行の本を読んで、エキスをまとめてコピーを持って行くと喜ばれ、ふところに入り込め、人間関係ができたという。

 それではということで、最近の話題の本10冊をチョイスし、サマリー紹介、ベストセラーのワンポイントをまとめた雑誌「TOP POINT」を発刊して16年間、発行元・著者の著作権の了解、理解も得られ、軌道に乗り出した。

 では、これだけ「本」の価値が認められているのに、出版不況とは、どういうことなのか。読書教育の不十分、放送文化の浸透、マンガ・ゲームの発達、そこへネットの登場と言われるが、果たして、そうだろうか。

 本はコンテンツ文化の母ではないだろうか。「本」から映画、放送、舞台、講演、携帯小説、キャラクター、イベント、メルマガ──とマルチウィンドウズの可能性はキリがない。

 もっと出版と電波とネットが近寄ってはみてはどうであろうか。最近、そういった著作権の仲介ビジネス、いってみれば、新しいスタイルのプラットフォームビジネスも生れてきている。

 ねぇ、ワトソン君、「君は月に何冊本を読む?」。「いや、今は冊数ではなく、1日何分本を読む?と聞いて欲しいですね!」。
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