“ライブドア騒動”から垣間見える 2011年 ネットをTVが流れる日

<“ライブドア騒動”から垣間見える 2011年 ネットをTVが流れる日>9.映像配信変えるグリッド技術

2005/07/04 16:04

週刊BCN 2005年07月04日vol.1095掲載

 三井物産で通信ビジネスを手掛けてきた担当者がこうもらす。「放送は電波塔1本建てたら、電波が届く範囲なら視聴者がいくら増えても問題はない。それに比べて通信によるコンテンツ配信は、視聴者の増加に伴って、サーバー設備の増強が必要になるので、いつまで経ってもビジネスが成り立たない」。

 古くから、ありとあらゆる通信ビジネスに携わってきた商社の人間の言葉だけに重みがある。

 確かに、インターネットで膨大な視聴者を抱える地上波のテレビ番組を流そうと思ったら、サーバーがいくらあっても足りない。これはライブドア騒動の際にも識者から指摘されていた点だ。高画質なコンテンツを効率的に配信する技術はないのか。

 実績のある技術としては、CDN(コンテンツ配信ネットワーク)がある。大量のキャッシュサーバーを使って、負荷分散を図ったコンテンツ配信専用のネットワークのことである。物理的にキャッシュサーバーを至るところ設置していけば、全国規模で負荷分散を実現できる。VOD(ビデオオンデマンド)配信サービスを手掛ける事業者の多くは、CDN技術を採用している。

 VOD配信を手掛けるソフトバンクBBグループのBBケーブルの関係者は、「数年前に比べて、サーバーのコストパフォーマンスが飛躍的に上がっている現在、設備を増強するのは比較的に容易になっている。これにサーバーグリッド技術を加えれば、さらに効率化できる」と話す。

 サーバーグリッドとは周知の通り、複数の物理的な資源を仮想的に1つにまとめ、負荷に応じて資源を最適に割り当てるもの。すでにネットゲームの分野では実用化されているケースもある。

 ソフトバンクBBは、日本オラクルと提携してグリッドコンピューティングを提唱しているだけに、CDNとグリッドを組み合わせたコンテンツ配信というのも現実味のない話ではない。

 最近ではピア・ツー・ピア形態のグリッドで映像を効率的に配信しようという動きもある。つまり、各ユーザーのコンピュータが中継サーバーになるという仕組みであるIPの世界は進歩が速い。数年前には荒唐無稽な話だったものが現在、実現している場合も多々ある。(坂口正憲(ジャーナリスト))
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