ITIL創生期 変わるITサービス

<ITIL創生期 変わるITサービス>11.保守の付加価値を高めるITIL

2005/07/11 16:18

週刊BCN 2005年07月11日vol.1096掲載

 NECフィールディング(FILDG)は2年前から、日本ヒューレット・パッカード(日本HP)にITIL教育の支援を依頼し、社内技術者向け教育コースを開始した。今年3月末のITIL初級資格「ファウンデーション」の有資格者は155人だが、今年度末までに同資格者を250人までに拡大する計画という。

 FILDGがITIL有資格者を養成する背景は、将来の事業拡大に向けた深い計算がある。「ユーザー企業に有資格者が出向き、保守・運用の悩みをITILベースで抽出し、解決策として当社の監視サービスやシステム運用代行などのプロダクトへ誘導する」(富永正敏・マーケティング本部シニアエキスパート)。

 ユーザー企業のシステムは、オープン化にともない、1企業内に複数ベンダーのハードウェア、ソフトウェアが混在する。しかし、いざトラブルとなると、各ベンダーへシステム障害の改善を依頼する必要があり、運用面が複雑化している。ところが、FILDGのプロダクトである「リモート監視サービス」などを導入すれば、これを一本化できる可能性があるのだ。

 富永シニアエキスパートは続ける。「NECグループが構築したシステムだけでなく、マルチベンダーのシステムを扱う率は高まる」。現在、FILDGが運用・保守サポートをするユーザー企業は、7割がNECグループが構築したシステム。ただ、「サン・マイクロシステムなどとの協業が進み、NECグループ外の『自主事業』を広げるため、NEC製以外の保守も担っていく」(同)と話す。

 この「自主事業」を拡大する上で、ITIL有資格者を増やし、ユーザー企業にITILベースのアセスメントを施す機会を増やし、「一緒に運用面の改善を図る」(同)ことを重視しているのだという。

 日立電子サービス(日立電サ)はFILDGと同様に「マルチベンダー保守」を早くから提唱している。現在は、6対4で日立製作所が構築したシステムの運用・保守サービスが主体。日立電サの宮入勉・理事主管技師長は、「他社エリアを攻める意識は強くないが、日立グループを含めたシステムインテグレータとタイアップして、保守・運用サービスの付加価値を生み出したい」と、ITILで保守・運用サービスが標準化されれば、日立グループ以外の販路が広がると見ている。
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