ITIL創生期 変わるITサービス

<ITIL創生期 変わるITサービス>12.経営者層に響くアセスメント

2005/07/18 16:18

週刊BCN 2005年07月18日vol.1097掲載

 富士通サポートアンドサービス(Fsas)は今年2月、親会社の富士通との統合を機に、ITIL準拠の運用支援サービスを開始した。新たに提供を開始したのは、Fsasが独自開発した「運用レベル評価ツール」を活用した「IT運用診断サービス」と、診断に基づき具体的な運用管理の改善案を提供する「IT運用改善支援サービス」だ。

 前者のサービスは、ITILで定義された11個のサービス管理プロセスと、Fsasが新たに加えた4つのプロセスを追加して約600の質問を用意した。同社はすでに、従業員1000人規模の企業10社程度に同サービスを活用したアセスメント(診断)を実施したが、「別々のベンダーに発注したITシステムが乱立して、運用もバラバラになっていた」(佐藤昭博・サービスビジネス本部サービス企画部第二サービス企画部長)企業が多かったとした上で、「CMM(ソフトウェア能力成熟度モデル)」のレベル2の企業が多い」と分析する。

 CMMとは、米国防省がソフトウェアを購入する際に評価する開発プロセスの成熟モデル。この基準値の「レベル2」は、人の依存性が高い運用になっていることを意味する。「優秀な情報システム担当者がなんとか動かしている状態。ITIL診断をすると、人に依存した属人的な問題が浮き彫りになる。このようにシステムの運用管理が可視化されるため、ITILは経営者層に関心が高いようだ」(佐藤第二サービス企画部長)と、これまでの感触を語る。

 ITILに基づく運用管理サービスに早期に取り組み始めた日立電子サービス(日立電サ)でも、ITILのアセスメントを100社以上に実施した。「ITILで運用管理を改善するとなると、トップ(経営者層)の判断が必要になる。ITILに基づく運用管理の改善では、トップや情報システム担当者、ベンダー側が一緒に何を達成するために実施するべきかを決定し、それを達成するためのKPI(重要業績評価指標)を導き出す必要がある」(宮入勉・理事主管技師長)と、経営者層との連携が必須という。

 Fsasでは、新サービスを開始して以来、これまで取り引きのなかった企業やシステム構築のベンダーから声がかかるケースが増えた。だが、「ITILビジネスは急速に拡大して人材育成が追いついていない」(佐藤第二サービス企画部長)ため、今年度(2006年3月期)中にITILの初級資格「ファウンデーション」を300人育成する計画だ。他の保守・運用サービスベンダーも、ITIL需要の高まりにともない、経営者層と具体的な協議ができるITILの有資格者の育成を急いでいる。
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