e-Japanのあした 2005

<e-Japanのあした 2005>45.業務・システム最適化計画見直し方針

2005/07/25 16:18

週刊BCN 2005年07月25日vol.1098掲載

 電子政府の業務・システム最適化計画の見直し方針が6月末までに出揃った。府省共通の業務・システム21分野、個別55分野の計76分野について、来年3月末までに最適化計画の策定を完了し、システム開発もいよいよ本格化することになる。最適化計画によってITシステムの政府調達問題が改善されるのか。これからが正念場だ。(ジャーナリスト 千葉利宏)

 2001年にe-Japan戦略がスタートして電子政府の構築が本格化するなかで、ITシステムの政府調達を巡って様々な問題が表面化してきた。ITゼネコンによる安値落札、経費の膨張と不透明な随意契約を招いていたレガシー(旧式)システム、各府省ごとにバラバラに行われてきた重複投資に対して、非効率で割高との批判が続出。その解決策として03年7月に各府省の情報化統括責任者(CIO)をサポートする民間人のCIO補佐官制度の導入が決定され、米国で成功したEA(エンタープライズアーキテクチャ)の考え方を取り入れて、03年12月から業務・システム最適化計画の策定に向けた準備が本格的にスタートした。

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 各府省CIO連絡会議(事務局・内閣官房、総務省行政管理局)が、04年2月に決定した最適化計画の対象とした業務・システムは共通21分野、個別51分野の合計72分野。その後、個別分野で警察庁の企画分析業務(警察)、防衛庁の特別調達資金に関する業務、総務省の電気通信行政関連業務などが追加されて対象分野が計77分野に拡大した。これらの中には36のレガシーシステムが含まれ、オープンシステムへの移行が可能かどうかを第3者による刷新可能性調査で評価したうえで、最適化計画の策定に向けての見直し方針を今年6月までに決めることになっていた。

 今回、77分野のうち見送りになった1分野を除いてすべての見直し方針が出揃い、レガシーシステムも抜本的な見直しを実施することが決まって、電子政府の業務・システムの再構築作業もスタートラインに立ったところだ。方針策定の過程で、厚生労働省が、当初は別々に開発する予定だった雇用保険業務と職業紹介業務などのシステムについて一元的に最適化を進めるとの見直しも行われたが、現時点ではまだシステム開発の方向性が示されただけで、経費の削減効果や業務処理の効率化などの成果目標は、これから策定される最適化計画に盛り込まれる。ここが最大の注目ポイントだ。

 すでに77分野のうち共通8分野と個別9分野の17分野では先行して最適化計画の策定を終えており、分野によってバラツキがあるものの、関係者によると「平均すると2-3割の経費削減効果が盛り込まれた」という。さらにレガシーについては、先の参議院決算委員会で、長年随意契約で委託してきた社会保険オンラインシステムの不透明な経費が改めて問題となり、6月にITシステムの見直しについて審査措置請求決議が採択された。レガシー36システム合計で05年度予算に約3572億円の経費が計上されているが、決議では見直しによって経費を約30分の1に削減した会計検査院の決算確認システムの事例を引用。8月の来年度予算概算要求に反映すべく、経費見直しに着手したところだ。そこでの見直し成果も踏まえて、最適化計画に削減効果が盛り込まれるとみられるが、「レガシーの場合は3割、5割の削減は当たり前」との声も聞かれ、発注者・受注者双方にかなりのプレッシャーとなりそうだ。

 「安値落札→高値随契」の悪循環を断ち切り、透明性の高いITシステムの政府調達を実現する──。公共工事分野では相変わらず談合問題などによる不透明性への批判が続いているだけに、最適化計画がIT分野において果たす意義は大きい。
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