“ライブドア騒動”から垣間見える 2011年 ネットをTVが流れる日

<“ライブドア騒動”から垣間見える 2011年 ネットをTVが流れる日>16.テレビ業界のiPod

2005/08/29 16:04

週刊BCN 2005年08月29日vol.1102掲載

 前号では、IPテレビ事業者の著作権法上の位置づけがあいまいなままだと述べた。

 ただ、総務省が地上デジタル放送のIP同時再送信を認めた現在(真の意図を見極める必要はある)、IPテレビ事業者が一般の放送事業者(テレビ局やCATV局)と法的にも同列に扱われていくようになるだろう。要は、総務省と文化庁が法解釈のすり合わせを行えば済むことだ。

 IPテレビ事業者の草分け、BBテレビで取締役を務める楜澤悟氏は、「もう『IPテレビは放送ではない』と言われないだけでも歓迎すべきこと。著作権者の(IPテレビは部外者という)先入観も和らぐ」と歓迎する。

 もちろん、業界内の慣習や制度は簡単には変わらないだろう。相当の抵抗が予想される。

 「著作権者団体は(既存の)テレビ局と一心同体のようなもの。新興勢力であるIPテレビの存在を疎んでいるテレビ局の意向に反して、著作権者団体がIPテレビに協力するとは思えない」(放送業界関係者)。

 現在、ネットによるコンテンツ流通の活性化を目指す経団連が著作権者団体と話し合い、IPテレビへの道を開く制度作りを行っているが、話し合いは端緒についたばかりの状態だ。

 話は変わるが、米アップルコンピュータの参入を契機にして、国内でもせきを切ったように音楽配信ビジネスが次々に立ち上がっている。

 5年ほど前、MP3プレーヤーが登場、音楽配信ビジネスが注目され始めた時、筆者はレコード業界を取材していた。その当時は、「いずれネット配信が主流になるかもしれないが、現状では著作権関係がネックになる」と業界は後ろ向きだった。

 実態としては、当時からDRM(デジタル著作権管理)技術は出揃っており、ネットの広帯域化も急速に進んでいた。技術的な環境は整備されつつあった。単に業界内の慣習や制度がネット配信という異物に対応しきれていなかっただけに見えた。

 それが今や、iPodという“外圧”の一押しにより、レコード業界の慣習や制度が一気に変わろうとしている。

 放送業界はレコード業界と比べてけた違いに大きいが、IPテレビにもiPodのようなブレークスルーは現れるだろうか。(坂口正憲(ジャーナリスト))
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