靴下メーカーのダン(大阪市、越智直正社長)は、流通コストを極限まで圧縮し、品質の良い靴下の販売で業績を伸ばしている。生産工場から顧客の手に届くまで流通の省力化や、売れ筋を見極めることで在庫をなくす取り組みなど、ITの力をフルに使って無駄なコストを削減する「ダンネットワークシステム」を構築した。

流通コストを極限まで圧縮

 ダンは、靴下専業メーカーとして靴下やストッキング、タイツなどの企画開発を行うと同時に、「靴下屋」や「ショセット」、「DAN」などのブランド名で、昨年度(2005年2月)末までに国内外計247店舗を展開している。店舗はフランチャイズ方式や直営店方式を採用し、海外では英国に3店舗出店している。

 繊維・アパレル産業は、人件費が安く生産力がある中国などの台頭で、輸入量が増えている。靴下業界でも昨年は8年連続して過去最高の輸入量を更新するなど、国内に占める輸入品の比率は高まっている。こうした厳しい情勢の中でも、ダンは主力商品の国内生産を守り続けている。差別化のポイントは、靴下に必ず求められる「履き心地の良さ」と、靴下の使命である「足を守る性能」、変化する楽しみである「ファッション」の3つのバランスが保たれた靴下づくり。

 ダンでは、約40社の工場に製造委託しており、このうち国内の7社がダンの専属工場として操業している。価格の安い海外製品に対抗するためには、まず「履き心地の良さ」や「足を守る性能」を高める必要があり、このためには、原材料となる良い糸を仕入れなければならない。良い糸を仕入れるためのコストは「削れない」(丸川博雄常務取締役)と、競争力の源泉である品質の高さの部分でのコストダウンは困難だとする。

 そこで取り組んだのが、工場から出荷した靴下を小売店に並べるまでの流通コストの削減である。ダンは、取引先の製造会社に生産を委託し、フランチャイズチェーン店に販売の多くを委託しているため、製造会社からフランチャイズ店に商品を卸販売する時は、それぞれの会社で売掛金や買掛金などの会計処理が必要だった。

 これを効率化するため、取引先など計7社で協同組合を92年に設立するなどして関係会社との結びつきを強化。本部が一括して会計処理を行うなどの間接経費の削減を進めた。協同組合では、商品力を高めるための研究施設や共同配送の拠点となる物流センターを開設して、商品力の向上や流通の効率化に取り組んでいる。

 こうした製販一丸となった財務会計や販売管理の仕組みを支えるツールとして、90年代初めに大型汎用機をダンが導入。同じ時期に専属工場7社が生産管理用のオフコンを導入、フランチャイズチェーン店が販売管理用のPOS(販売時点情報管理)レジを導入した。ITの導入コストは、ダンや専属工場、フランチャイズチェーン店がそれぞれ受け持つことで各社の負担を軽減した。これがダン独自の製販一体システム「ダンネットワークシステム」のスタートとなった。その後、順次オープン化を進め、現在ではパソコンをベースとしたシステムに置き換わっている。流通の無駄を省くことで、在庫圧縮にも結びつけた。

 IT活用のポイントは、工場から小売店まで一貫した全体最適の方針にある。専属工場のうち、社員数が最も多い会社は25人、最も少ないのは3人。靴下の生産はこうした中小規模の工場に支えられている。ダンの強みの1つである「あたかも店舗の隣に靴下工場があるかのような顧客密着の生産体制」(同)を実現するには、需要の変化に即応できる中小工場の敏捷性が求められるからだ。中国など海外からの輸入製品と同じような大量生産を行っていては競争に勝てない。また、最先端のファッションをリードするには、リードタイムが長い海外工場では間に合わないとダンでは考える。

 ITは各部門の要求に従って個別に導入するのではなく、製販全体の流れの中で、最低限必要なITを迅速に導入することを心掛けた。たとえば日々の業務に追われがちな人手が少ない工場でも、導入してすぐに使える簡便なITの導入を重視。「3人しかいない小さな工場でも使える簡素なITならば、人手が多い大きな工場でも必ず使えるはず」(同)と、人手が少ない工場や、2-3人の販売員で運営されている小規模な店舗でも使えるITを選ぶことで、製販一体となって活用できるシステムに仕上げた。個別に最適化されたコンピュータシステムは複雑になりがちで、全体から見れば利用しにくくなる。できるだけ簡素なシステムにすることで、「ダンネットワークシステム」に参加するすべての事業者がフルに活用できるようにした。

 ダンの単体売上高は、02年2月期の87億円に対して、03年2月期は79億円、04年2月期84億円、05年2月期83億円とほぼ横這いが続いている。これは、有力販路の1つだった駅前商店街の空洞化や、女性が靴下やストッキングを履かない傾向が出てきたことなどが背景にある。ダンでは大規模な販売店舗のスクラップ&ビルドを実施することで、より売れる商圏への出店を急いでいる。同時に、これまで売上高の約9割を占めていた女性向けの販売に加えて、男性や子供向けの商品および販路の強化などを通じて販売ターゲットを広げ、売上増に結びつける。

 ダンネットワークシステムを柱とするITを活用したビジネスの基盤は整っていることから、店舗のスクラップ&ビルドや新しい販売ターゲット向けの商品開発の進展にともない、「再度、成長が見込める」(同)と、今後の成長に手応えを感じる。(安藤章司)