e-Japanのあした 2005

<e-Japanのあした 2005>52.プラットフォーム機能のあり方

2005/09/19 16:18

週刊BCN 2005年09月19日vol.1105掲載

 インターネットを通じて各種サービスを提供するときに重要な役割を果たすポータルサイトや認証、課金などのサービス基盤を「プラットフォーム」機能と定義付け、今後のあり方について検討した報告書がこのほど公表された。総務省が今年3月に設置した「ユビキタスネット社会におけるプラットフォーム機能のあり方に関する研究会」(林敏彦座長=放送大学教授・スタンフォード日本センター理事長)がまとめたもので、プラットフォームを民間系、公共系、次世代の3つの分野にわけて現状と課題を整理。総務省では、ICT産業の競争力強化に向けてプラットフォーム機能の整備を積極的に進めていく考えだ。(ジャーナリスト 千葉利宏)

 わが国の電子商取引市場は、2004年にBtoBで初めて100兆円を突破。BtoCも前年比3割増の5兆6000億円、ネットオークションも7800億円規模に達するなど順調に拡大する一方、携帯音楽プレーヤーの登場で音楽配信などの有料コンテンツサービスも本格普及する環境が整ってきた。総務省では昨年12月、2010年までにユビキタスネット社会を実現することを目標とした「u-Japan政策」を策定したが、そのなかで今後のICT産業の発展に向けてプラットフォーム機能の拡充・強化が不可欠との認識が示された。特に映像・音楽配信などのコンテンツビジネスを育成していくうえで、効率的な少額課金の仕組みを整備していく必要性が指摘され、今回の研究会を立ち上げるきっかけになったという。

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 しかし、研究会発足後、その議論は見送られた。少額課金・決済システムの本命である電子マネーを巡る動きが一気に加速してきたためだ。2大勢力の「Suica(スイカ)」と「Edy(エディ)」が競争しながら機能・サービスの充実を進めている段階であり、しばらくは市場原理に任せた方が得策との判断が働いたようだ。研究会が今年3月に実施したアンケート調査では、映像配信、音楽配信の決済手段としてはクレジットカードが6割、銀行振り込みが2割と大半を占めていたものの、学生でも手軽に利用できる電子マネーによる決済も音楽配信で1割、映像で5%を占めた。現在、電子マネーは互換性がなく、スイカとエディで読み取り装置も異なっているが、報告書では異なるプラットフォーム間の相互運用性の確保についても言及。競争政策の観点も踏まえて施策を進めていくものとみられる。

 研究会では、これまで個別に議論されてきたプラットフォーム機能を改めて8つに整理した。ネットオークションなどの取引仲介機能、各種ポータルサイトなどのポータル機能、公的個人認証などの認証機能、電子マネーなどの契約・課金代行機能、PKI(公開鍵暗号基盤)などの与信機能、取引手順・データ形式などのシステム基盤機能、価格比較サイトなどの市場機能、知的財産管理機能──である。さらにプラットフォームを、民間で電子商取引などのサービスに関わる「民間系」、情報家電や電子タグなどユビキタスネット社会の中核となる「次世代」、行政サービスや医療、教育など公共的なサービスに関わる「公共系」の3つに分類し、それぞれに課題を抽出するとともに、総務省として取り組んできたプラットフォーム関連施策を整理。来年度予算の新規要求として民間系では「IPネットワーク上の多様なサービスの相互接続試験の推進・強化」など、次世代では「情報家電の高度利活用技術の研究開発」など、公共系では「ユビキタスネット技術による医療の安全性向上などに関する調査研究」などを加え、既存施策を合わせて100億円規模の予算を投入してプラットフォーム機能の拡充・強化を進めていくことにしている。
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