コンピュータ流通の光と影 PART IX

<コンピュータ流通の光と影 PART IX>拡がれ、日本のソフトウェアビジネス 第24回 東北(2)

2005/09/26 16:05

週刊BCN 2005年09月26日vol.1106掲載

 大手ITベンダーの東北拠点は宮城県仙台市に集中している。東北6県をテリトリーとする大手各社の担当者は一様に、IT景気の低迷、東北地区の〝地盤沈下〟を懸念している。地元のニーズ発掘を模索する一方で、首都圏のビジネスを中心に売り上げを伸ばそうという動きもある。大手ベンダーが首都圏に目を向けるなかで、競争力の劣る中堅・中小システムインテグレータ(SI)も需要の中心地である首都圏を向かざるを得ない状況が続く。(光と影PART IX・特別取材班)

事業領域拡大と独自技術醸成で “地盤沈下”から浮上のきっかけに

■市町村合併特需の予想外れる

photo 大手コンピュータメーカーにとって、東北地区のソフト市場は、民間より自治体など公共のウェートが高かった。富士通の古川章・東北営業本部長は、「2002年度は売上高の70%以上が公共分野で占めていた。しかし、04年度は公共の比率が6割程度に減った」としている。電子自治体構築や市町村合併によるシステム統合などの〝特需〟が期待されたものの、合併が破談になるケースや財政難による自治体の電子化の遅れなど、「期待したほどではなかった」(古川・東北営業本部長)というのが実情のようだ。

 「売り上げ優先で何でも手がけるより、利益を重視した結果」(同)でもあり、敢えて無理をしてまでプロジェクト獲得に走らなかったことが、売上高に占める公共分野のシェアを落とした理由の1つでもある。富士通では、地域ビジネスグループパートナービジネス本部長から転じたばかりの横山豊・北海道営業本部長も、北海道経済および自治体需要に対して厳しい見方を示していたが、より東京に近い仙台にあって、古川・東北営業本部長も同じように厳しさを隠さない。

 NECの小原正孝東北支社長も、「合併商談の勝率は3割くらい」と語り、それほどリソースをかけなかったという。NECの場合、売上高のシェアは自治体をはじめとした公共関係で6割強、民間で3割強と富士通とほぼ同様だ。NECも同じだが、「地元の有力地銀や大手製造業の工場など、東北でも投資額の多い企業のほとんどが、東京の大手IT企業の本社直轄でシステム案件が動いている」(小原支社長)ことが、地元IT企業が伸びない原因の1つでもあると分析する。

 NECや富士通の地方のシステムエンジニアリング(SE)会社にとっても、東北地区の市場低迷は看過できない問題だ。かつて大手ベンダーは、地方のソフト開発者を確保することを目的に、地方SE会社を相次ぎ設立した。東北地区にも富士通やNEC、日立製作所がソフト開発会社を置いた。これら3社はここ2年ほどの間に、事業効率化を目的に地方のSE会社の再編を進めた。「もはや仕事が本社から降ってくるなんていう時代ではない」というのは、東北にある大手ベンダーのSE会社トップが共通して語る言葉だ。

 富士通東北システムズの植松一裕社長は、「本社の案件など東北6県以外の売上高比率は30%程度。70%は地域向けのビジネスだ」としている。地域の市場環境がさらに悪化した時のために、「半々の方が経営的には安定するかもしれないが」としながらも、「青森の開発拠点をシステムセンターとするアウトソーシングの受注が増えてきた」と、独自のビジネスで成長のきっかけをつかんでいく考えだ。

 NECソフトウェア東北の岡田勝利社長は、「NECの子会社という立場は変わらない」とし、「NEC向けの売上高シェアは80%」という。もちろん、「仕事が降ってくるわけではない」わけで、独自に得意技を編み出し、韓国企業との提携なども通じて戦力アップを図っている。「こうした独自に強化した分野があって、NECの案件に加わってシステムインテグレーション(SI)を担当する」(岡田・NECソフトウェア東北社長)ことで、NEC向けの売上高で高いレベルを維持できるわけだ。

■地元需要が鈍く「東京を向く」

 日立東日本ソリューションズは、東北から北海道までの流通・産業分野のソリューションビジネスを日立グループの中で担っている。茅根修社長は、「日立グループの中にあって、当社としてはニッチな分野で特徴を出していく」と語る。さらに、「製造業など東北、北海道でのIT投資は鈍い。これまでは大手、中堅以上が中心だったが、中小企業のニーズも掘り起こしていきたい」とターゲットを拡げていく考えだ。

 「東北6県のIT産業の売上高は04年が約2300億円。この3年で6・4%減少した」と指摘するのは、仙台応用情報学研究振興財団理事長などを務める野口正一・東北大学名誉教授。システムインテグレータ(SI)などの企業数が他県に比べて多く、売上高規模も大きい宮城県を例にとると、宮城県の情報サービス産業の売上高構成比で最もシェアの高いのが対同業者、つまり下請けの33.3%で、次いで卸小売業5.1%、金融保険業5.0%などと続く。これが東京都の場合は、金融保険業がトップで22.1%、卸小売業10.1%に続いて同業者向け10.0%となる。つまり下請け比率が極めて高いというわけだ。

 このほど仙台市内で開かれたSI企業の会合で、東京の会社が受託企業を探しているという話がもたらされた。居合わせたSI企業のトップの多くが、「500人月や300人月といった大規模プロジェクトには、対応することは不可能だ」と笑う。「10人月とか50人月程度で、人月単価が納得できれば請け負いたい」とも。「やはり、東京を向いている」というのは、地元中小SIの偽らざる本音だろう。

 東北6県それぞれで地元のIT投資が拡大しない現状では、下請けに依存するこの状況を抜け出すことはできない、という見方もできる。野口・東北大名誉教授は、「こうした下請け体質が染みついているようでは、これから東北のソフト産業が伸びる可能性は少ない」と厳しい見方を示し、さまざまなIT産業振興プロジェクトに自ら携わっている。

 日本オラクルの佐々木賢一東北支社長も、「下請け比率が高いことで、優れた人材が首都圏に流れ、そして地元に優秀な技術者も育たない」と語る。人材育成を含め、競争力のある分野を醸成することが地方のニーズを開拓し、単なる下請けに依存しない企業体質を作ることになる。
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