経営革新!SMB 新フェーズを迎えるIT施策

<経営革新!SMB 新フェーズを迎えるIT施策>19.サンコーインダストリー

2005/12/12 20:29

週刊BCN 2005年12月12日vol.1117掲載

 モノとモノを結びつける際、最も一般的に用いられているのがネジ。製造業の海外流出はあるものの、機器の心臓部は国内でアッセンブルし、半製品化して最終組み立て地に輸出される場合も多く、国内需要は安定している。サンコーインダストリー(奥山泰弘社長)は、ネジやボルトといったファスニング製品の専門商社として、3期連続で増収を達成。今期(2006年2月期)も約160億円の売り上げを見込んでおり、4期連続の増収をほぼ手中にしている。

IT武装で納品サービスナンバー1企業に

 専門商社にとって、最大の武器となるのは品揃えの豊富さだ。あらゆる製造業の根幹を支えるだけに、ネジの種類は無数と言ってよく、顧客からどういう要求があるかわからない。注文があっても対応できなければ商機を失い、競合する企業に奪われてしまう。このため、同社では「現に注文があるものだけでなく、注文が入るであろうと思われるものも確保しておく」というのが、創業以来の基本姿勢という。

 しかし、単に在庫を膨らませてしまっては意味がない。在庫管理を徹底するとともに、データに基づいて「注文が入るであろうもの」を的確に予測してこそ、ライバルに勝てる。サンコーインダストリーでは、1981年にコンピュータの導入を図り、在庫管理に乗り出した。

 当時の売上高は約34億円。これに対して在庫高は約10億円あり、3.46月分の在庫を抱えていたことになる。コンピュータの導入によって、これを適正水準に修正していき、2か月前後をキープ。導入後10年目となる91年には、売上高はほぼ2倍の61億円となったにもかかわらず、在庫は2か月というレベルを維持する。業界平均の在庫は1.5か月程度だが、品揃えの豊富さで、商機拡大が図れる体制をつくりあげた。

 現在、約30万種の商品を取り扱う。実在庫だけでも10万種で、競合企業に圧倒的な差をつけている。「今ではお客様からサンコーにない商品なら、あきらめるしかないと言われるほど。種類ごとに違う業者に発注するより、全てが揃うサンコーに、というところも増えている」(小島嘉門取締役仕入部部長)という。理想とする「ネジのワンストップ・ショッピング」への道筋が開けつつあるということだ。

 在庫管理とともに、IT活用によって同社の有力な武器となったのが、顧客対応力だ。同社は従来から「即納体制」を敷き、顧客からの注文があった当日に出荷することを基本としてきたが、00年にバーコード・システムを導入することで、よりきめ細かなサービスを提供できるようになった。

 商品は、仕入先から納品される段階から、それぞれバーコードで管理している。営業スタッフは、顧客から商品の照会があった場合には、パソコン上の在庫管理画面から在庫の有無を即答できる。顧客からの注文に対しては、バーコードに基づいて物流センターでピッキングされるが、注文を入力した段階で、小箱に入った商品などが発送用の段ボールケースに最も効率的に収まるよう自動的に組み合わせられる。同時にどんな商品がどれだけの量で、その段ボールに収められているかを記載した明細シールまで貼付できるようにしているため、顧客は梱包を解くまでもなく、到着した商品の内容を把握できる。顧客宛には当日出荷明細がファックスで送信されるため、翌日に手元に届く商品の確認も可能だ。

 バーコード・システムの導入により、即納体制の精度は向上しており、誤出荷などのミスが発生する可能性は10万分の6となった。さらに誰がピッキングや梱包を行っても、ミスが起きないようになったため、物流センターの人件費も流動費化できるようになっている。 現在、午後4時までに注文が入ると、北海道と鹿児島、沖縄以外なら翌日に顧客の手元に届くようになっている。「納品についてはスピードも、精度も、サービス内容もナンバー1。他社にはできない」と自負している。

 今後の課題としては、まず即納体制をさらに強化すること。「受注締め切り時間を遅くし、顧客の利便性をより高める。いずれは24時間体制ということも、考えねばならないかもしれない」という。同時に、顧客のニーズとしてある「指定納期」への対応も必要になってくるとみている。顧客にとって一番便利な会社になることが、顧客を増やし、事業の成長をもたらすということだ。(山本雅則)
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