コンピュータ流通の光と影 PART IX

<コンピュータ流通の光と影 PART IX>拡がれ、日本のソフトウェアビジネス 第36回 高知県

2005/12/19 20:42

週刊BCN 2005年12月19日vol.1118掲載

 四国4県のなかでも、高知県は、産業の集積や地政学的な面でハンディキャップを抱えている。それらを克服するため、1997年からは県民や企業、地域ぐるみで、全県的な変革を目指す「情報生活維新」に取り組んできた。ユニークな成果が得られた例もあるが、情報サービス産業が大きく前進したといえる状況にはなく、その視線は県外に向けられている。(光と影PART IX・特別取材班)

地理的なハンディをバネに県外に成長エンジン求める

■財政難のなか行政も産業振興に懸命

photo 高知県では、県内企業の情報化推進策として、相談窓口や企業連携のためのポータルサイトの開設、インターネット・ショッピングなどを通じた事業機会の拡大を支援してきた。しかし、財政状況の悪化で、採り得る方策も限られてきているのも事実。「高知県情報生活維新協議会」の活動も、来年度以降の見直しが検討されている。

 「産業振興策として、特定の業種にターゲットを絞れる状況にない」とは、高知県商工労働部商工振興課の佐竹一浩主幹。今年度から、やる気のある県内企業なら業種を問わずに事業費を補助する「頑張る企業総合支援事業」をスタートさせた。新分野に挑戦する企業には、経営改善計画などに基づく審査を実施したうえで、事業費の一部を補助する。これまでに32社が認定されており、情報サービス産業も含まれる。IT企業だけを対象にした支援ではないが、企業財政難で予算に限りがある以上、やむを得ないといえる。

 もっとも、情報サービス産業を軽視しているのではない。現在、高知県情報産業協会を窓口に、県庁の総務事務をアウトソーシングするためのシステム開発を進めている。その後の運営などに県内IT企業を活用することもありうるとして、育成には知恵を絞っている。

 県民の4割が集中する高知市でも「県内産業の底上げを支える産業」として、情報サービス産業を位置づけ、98年にソフトウェア団地を開設した。協同組合方式のため、入居企業は11社で固定されている。

 その1社であるCIJほくでん(氏原憲二社長)は、下水管に取り付けたセンサーによって独居老人などの安否情報を確認するシステム「気にしてねット」を開発。NTTマーケティングアクトやCIJが本格的に販売する予定になっている。民間利用はもちろん、自治体などでの活用も考えられるため、「来年度以降、市としても助成などを検討していきたい」(門田良章高知市商工観光部産業政策課長)という。

 情報サービス産業にとっては、必ずしも「追い風」が吹いているわけではない。しかし、今春から産・官・学が就業時間外に率直な情報交換を行う場としての「530クラブ」をスタートさせるなど、行政サイドも懸命。コールセンターの誘致も実績を上げつつある。また、民間でも、昨年10月に四国4県の富士通系システム・エンジニアリング(SE)会社が合併して誕生した富士通四国システムズが「高知事業所にはIDCがあり、セキュリティやファシリティも充実している。そこを活用して、四国全体の開発拠点として拡充していきたい」(白山健一社長)との意向を示している。情報サービス産業における高知県の位置づけが変わってくることも考えられる。

■まず四国で地力蓄え、都市圏に展望を

 もっとも、県内のIT市場が急速に拡大するわけではない。産業基盤の脆弱さは否めない事実だ。いきおい、高知をベースに活動してきたIT企業の目は、外に向けられる。

 四国情報管理センターの中城幸三社長は「県内だけという気持ちはない。まずは四国内で通用する企業にしたい」という。今年度は自治体合併の駆け込み需要があり、売り上げ構成では、公共が7割を占め、高知県外の仕事も多くなっている。しかし、来年度以降、公共の比率が下がり、競合他社も民間に本腰を入れると見ている。「今後、民間企業に注力していくが、スピードが要求されるため、他社とのアライアンスは至上命題」(中城社長)という。

 もちろん、四国の外にも目を向ける。「産業も、人も都市圏に向かい、地方は厳しくなる。都市圏は見逃せない」とは、中城一システム管理部兼営業支援室マネージャー。公共部門向けのオープン系財務会計サブシステムでは、全国に通用する製品を持っている。

 「実績はまだ出ていないが、首都圏の企業とアライアンスを組んでおり、大手ベンダーとも話し合っている。高知県内では価格面での優位性が必要だったが、逆にいうと高知で通用するものは他県でも通用する」(中城マネージャー)と自信を示す。「事業安定化に必要なら、首都圏に拠点を置くことも考える。場合によっては、『四国』が付く社名も変更を検討する必要があるかも」(中城社長)とまで考えている。

 日立グループと関係が深い高知システムズ(岡崎昭介社長)も、県内の有力顧客を押さえたうえで、県外での事業拡大を進めている。中川朗寛取締役総務部長は「県内顧客からはコンスタントに開発の引き合いがあるが、増えるわけではない。オリジナルとアライアンスの2本立てで県外を攻めたい」という。

 日立グループなどとの連携により鉄道や電力などを手がけてきた結果、特定業務向けのオリジナルソフトでは、圧倒的な強みがある。ニッチな分野かもしれないが、正当に評価してもらえれば、顧客獲得は可能と考えている。

 一方、アライアンスでは、地元有力企業向けの開発で永年蓄積してきたノウハウを生かす方針。「企業内の個別のシステムではなく、企業全体としての最適なシステムを提案する活動を展開している。コンサルタントとアライアンスを組み、その知名度を活用させてもらう形で営業につなげる。すでに九州地方では成果に結びついている」(中川取締役)。

 事業構造の変化に対応するため、社内制度改革も進めている。ITスキルスタンダードをベースに、教育体系やキャリアパスを整備し、プロジェクト管理能力の向上や上流工程へのシフトを進めている。開発については、場合によって中国企業も活用していく方針だ。

 県内の顧客は、事業安定化の重要基盤として確保し、県外に成長エンジンを求める。高知県の情報サービス産業が、ハンディキャップを克服するための共通項といえそうだ。
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