政府が旗振り役となって2001年から取り組んできた「e-Japan戦略」はITベンダーに何をもたらし、そして今年から始まる「IT新改革戦略」に何を期待するのか。主要ベンダーに話を聞いた。

 ――e-Japan戦略の5年間を振り返ってどうか。

 「e-Japan戦略の中でITベンダーが何をしてきたのかと言えば、政府と同じで手探り状態だったのが実情だろう。確実に見えていたのはインターネットのブロードバンド化が進んだことだが、それによってITベンダーのビジネスがどれぐらい拡大したとも、収益的にメリットがあったとも言いにくい面はある」

 ――2000年のITバブル崩壊直後でIT投資拡大の期待は大きかった。

 「IT投資拡大を見込んで各社とも事業戦略を立てたのは確かだ。しかし、それによって競争も激しくなり、官公庁市場では入札による叩き合いが起きてしまった。結果的に期待したほどの需要が創出されなかった。端末とネットワークは普及したが、そこから先の変革スピードが上がらずに、中だるみが生じた」

 ――政府がレガシー(旧式)問題に踏み込んだ影響は。

 「レガシー・イコール・メーンフレームという考え方に、大手ベンダーは本質的にはあまり反応していなかったし、なぜオープンシステムが良いのかも議論してこなかったのではないか。最近はいかに基幹業務の最適化を実現するかに関心が移ってきている。オープンソースソフトウェア(OSS)も、ベストプラクティスがあるかどうかが重要で、ITベンダーとしてシステム保証を求められれば、実績と信頼性のあるOSやミドルウェアを選ぶのが当然だろう。リナックスも基幹システムで使われた事例はまだ少ない」

 ――それでもEAによるシステム再構築を進めようとしている。

 「システムを見直す以前に、縦割り組織のままでIT化しようとしてきた。それでは効率化は進まないのも当然で、本当に効率化しようとするなら、法律や組織まで踏み込んでいくしかない。ITベンダーから見ると、EA導入の意図は入札の叩き合いが進むなかで、発注者自らがシステムの仕様を書けるようにすること。OSSも、マイクロソフト一人勝ちの状況を変えたいとの発想から出てきたもので、他のベンダーに対抗OSを作るだけの体力がないからOSSに向かっているのが実態だろう」

 ――次期戦略に何を期待するか。

 「電子政府などを構築するためのインフラはできたが、アプリケーションが普及するスピードが遅く、利便性が実感できていない。一方で携帯電話の普及が進み、電子商取引も活発化してユビキタス化が進み出している。行政サービスも早くユビキタス化しないと、社会全体としてユビキタス化のメリットを実感できない懸念がある。電子カルテの普及も、医療制度全体を動かしていかないと進んでいかない。そうした面で政府のリーダーシップに期待したい」

 ――IT需要の今後の見通しは。

 「電子政府などのシステムを効率的に構築しようとすれば、市場全体のパイは減っていかざるを得ない。そう捉えてITベンダーも事業戦略を考えていく必要があるのだろう。これまで組織ごとにシステムを構築していたのが、民営化が進めばアウトソーシングも増えるだろう。変化があれば、そこに必ずビジネスが生じるはずで、新しい需要をいかに取り込んでいけるかが勝負だ」

(ジャーナリスト 千葉利宏)