ユビキタスが日本を変える IT新改革戦略

<ユビキタスが日本を変える IT新改革戦略>15.オンライン利用促進のための行動計画

2006/04/10 16:04

週刊BCN 2006年04月10日vol.1133掲載

 電子政府のオンライン利用を促進する取り組みが本格的に動き出す。内閣官房IT担当室と総務省は、昨年7月にオンライン利用を重点的に促進する行政手続き172手続きを決めたが、3月末までに具体的促進措置と目標利用率を定めた行動計画を取りまとめて公表した。4月3日からは電子政府の総合窓口サイト「e-Gov」で、各府省の共通受付窓口となるe-Gov電子申請システムも稼働。今年1月に策定した「IT新改革戦略」では、2010年度までにオンライン利用率50%以上を目指すとの目標を掲げており、各府省が打ち出した行動計画の実効性が問われることになる。

 行政手続きのオンライン化は、90年代から取り組みが始まり、03年度末までに中央省庁に直接申請・届け出を行う手続きのうち96%がオンライン化を終えている。しかし、2年を経過しても利用率1%未満に低迷している手続きも少なくない。原因として、(1)各府省ごとに電子申請の受付システムがバラバラでパソコンなどの利用設定が面倒(2)添付書類を別途郵送するなどオンライン化されても利便性が実感できない(3)公的個人認証などの電子署名・認証サービスが普及していない─などが指摘されてきた。

 政府はまず、電子申請の受付システムを「e-Gov」にできるだけ統合するため、総務省行政管理局で汎用受付システムの開発に着手。続いて、(1)年間申請件数が多い(10万件以上)(2)企業が行う頻度の高い(3)オンライン利用に対する企業ニーズが高い─の3条件に当てはまる172手続きを「オンライン利用促進対象手続き」に選定、担当府省で利用促進措置と目標利用率の策定作業を進めてきた。

 新たに決まった行動計画には、手続きごとに、06年1月時点までの利用実績、08年度末まで3年分の目標利用件数・利用率、目標達成に向けた具体的措置内容が明記された。IT担当室で172の対象手続きの目標利用率を年平均申請件数の加重平均で集計したところ、04年度末の実績約11%から、08年度末には28%までアップする見通しとなった。対象手続きには、特許など工業所有権申請などオンライン利用率がすでに80%を上回っているものも含まれ、3年後には100%近くを目指す手続きがある一方で、利用率が低迷しているものも多く、目標利用率の設定にも苦心の跡がうかがえる。

 利用者が主に個人となる手続きのうち、国税申告や納税証明書交付請求などは08年度末の目標利用率を8%に設定。不動産登記、供託、行政相談、健康保険被扶養者(異動)届など10余りの手続きは、目標数値の設定を今年末まで先送りした。「個人のオンライン利用率の向上と、公的個人認証の普及率はクルマの両輪の関係にある」(IT担当室)と表現するように、公的個人認証が普及していればオンライン利用率の向上も期待できるが、逆に電子申請のメリットが実感されなければ公的個人認証の普及も進まない。現状は目標設定に慎重にならざるを得ない状況ではある。今後の推移をみながら目標を上方修正できる方策を探る必要はあるだろう。

 個人向けが難しい分、利用率アップを見込んでいるのが、法人利用や、税理士、社会保険労務士などの代理人利用だ。利用者が主に法人向けでも利用率が10%以下にとどまっているような手続きで08年度末の目標利用率を20-40%に設定した。現在は代理人が電子申請を行う場合に申請者本人と代理人の両方の電子署名が必要だが、代理人の電子署名だけでも認める検討を進めるほか、税理士などの業界団体に数値目標の設定を求める方針も打ち出した。オンライン利用の普及促進は関係業界や企業のIT化を後押しすることになりそうだ。(ジャーナリスト 千葉利宏)
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