システム開発の効率化最前線

<システム開発の効率化最前線>13.ダンクソフト 統合情報管理システム大幅拡充へ

2006/07/10 20:37

週刊BCN 2006年07月10日vol.1145掲載

 ソフト開発のダンクソフト(星野晃一郎社長)は、.NETフレームワークをベースとした独自の統合情報管理システムの拡充に力を入れている。年内には、顧客管理やプロジェクト管理など従来個別に開発していた一連の情報管理システムを統合化し、より一体的に運用できるようにする。将来的にはウェブに完全対応することでASP方式での提供も検討している。海外での販売も視野に入れて英語版もつくる。(安藤章司●取材/文)

年内めどに.NETベースの新製品投入

■ビジネス関連のデータを一元管理するソフトがヒット

 ダンクソフトは情報を管理するシステムづくりを得意としている。あらゆる情報の出所が“人”であることに着目し、1993年に“人脈管理ソフト”をマイクロソフトのデータベースソフト「アクセス」上で開発したのが、現在の製品シリーズを本格的に展開する端緒となった。顧客や社員、協力会社などビジネスにかかわる個人や法人を一元的に管理する斬新な発想のソフトだ。

 アクセスユーザーに製品案内をかけたところ「即座に1000本ほど売れた」(星野社長)と予想を上回る評価を得た。

 当時はまだアクセス対応のアプリケーションソフトがそれほど多くなかったという要因もあるが、「人に軸足をおいた情報管理の需要が高いことは確か」と手応えを感じた。以来、情報管理システムの研究開発に経営資源を集中的に投入してきた。

 03年には、人脈管理ソフトの機能を大幅に拡充した製品を完成させるとともに、プロジェクト管理やスケジュール管理など独自パッケージソフトを開発した。

 製品の名称は人脈管理ソフトが「ドットメンバーズ」、プロジェクト管理ソフトが「ドットプロジェクト」、スケジュール管理ソフトが「ドットスケジュール」で、これら3つの製品を総称するブランドとして「デジテリア」を採用した。

 デジテリアシリーズのなかでも、人脈管理のドットメンバーズは独創的なアイデアに基づいており顧客からも高い評価を得た。このことがきっかけとなってマイクロソフトのパートナー認定制度のなかで最高位の技術やサービスの要件をクリアしたことを認める「ゴールド認定パートナー」の指定を受けた。


■赤字プロジェクトの早期発見に効果を発揮

 情報を管理していくうえでカギになるのは、さまざまな情報の一元化である。ダンクソフトがターゲットとしている業種のひとつに出版社があるが、往々にして情報管理の一元化に至っていないケースが見られるという。例えば、定期購読客を管理するシステム、取次・書店を管理するシステム、原稿料支払いのための著者の出稿状況を管理するシステム、潜在顧客獲得のためのダイレクトメール(DM)管理システムなど複数のシステムが個々に構築されているという具合だ。

 「住所データ」を例にとっても、頻繁に変更がかかる。バラバラのシステムでは、ひとつのシステムで情報を更新しても他のシステムには反映できない。ドットメンバーズでは個人や法人を一元的に管理し、その上に定期購読客や取次・書店、DM対象の潜在顧客、著者などそれぞれの管理システムを走らせる仕組みにした。こうすればどこかのシステムで更新した情報を他のシステムでも共有することができるからだ。

 一元管理の考え方をプロジェクト管理に応用したのがドットプロジェクトである。広告代理店や編集プロダクション、ソフトウェア開発などプロジェクト単位でビジネスをしている業種を主なターゲットとしている。誰がどのような仕事をして、どの協力会社にいくら発注したのかを一元的に管理することで、一段階早いタイミングで原価を把握する。ドットスケジュールも同様の管理手法を用いることで、プロジェクト全体をスムースに進行させていくものだ。

 協力会社を多数動員してプロジェクトを進める広告代理店などの例では、「もともと原価が見えづらいビジネス形態であり、なかには協力会社から請求書がきて初めて正確な原価が分かるということもある」という。原価を把握するタイミングが遅くなれば赤字プロジェクトになるリスクも高まる。カネの流れを管理するシステムだけに重要度が高く、ダンクソフトの主要商材の中で稼ぎ頭になっているパッケージソフトである。

■ASP方式でのサービス提供で収益の安定化を図る

 ダンクソフトの昨年度(06年6月期)の売上高(見込み)は前年度比約10%増の約2億5000万円。下請けのソフト開発はせず、デジテリアシリーズなど独自開発のパッケージソフトをベースとしたシステム構築をビジネスの主体としている。

 目下の課題は自社パッケージの開発時期に差し掛かると経費がかさみ利益が圧迫される点にある。赤字にはなっていないものの、03年に完成させたデジテリアシリーズの開発フェーズでは事業の伸びが鈍化した。

 ここ数年は、新製品の開発フェーズにおいても一定の利益を確保できるよう、遠隔保守などサービスメニューの拡充を進めてきた。年内に完成予定の次期デジテリアシリーズでは、ウェブへの対応を加速させることで、将来的にはASP方式による提供を視野に入れている。ASP化を進めれば、毎月一定の収益が安定して得られるため、売り切りのシステム構築に比べれば売り上げを平準化しやすい。収益基盤が厚くなれば開発もより安定して行えるようになってくる。

 また、従来のドットメンバーズ、ドットプロジェクト、ドットスケジュールと3つに分かれていたシステムを次期デジテリアシリーズでは統合化する方向で作業を進めている。人の管理とプロジェクト・スケジュールの管理を統合的に運用することで情報管理をより強化するのが狙いだ。顧客の使い勝手も向上する。デジテリアシリーズでは初めての英語版も開発中で、「海外の販売パートナーを探し出して世界展開を目指す」計画である。

 昨年11月から本格的に設計を始め、マイクロソフトからコンサルティングの協力も得た。設計仕様書も改めて整理し、開発効率の改善を図った。今年5月からプログラミング作業に入っており、現バージョンと同じく.NETフレームワーク上で開発している。「基本的な機能は.NETフレームワークでカバーされていることから、当社は付加価値部分であるアプリケーション開発に資源を集中できる。もし他のプラットフォームで開発していたら2倍の開発期間が必要だろう」と評価する。

 デジテリアは造語で、住宅などの室内装飾を指す「インテリア」、建物の塀や庭など外周りを指す「エクステリア」にちなんで、ビジネスをする上で欠かせないデジタル環境を「デジテリア」と位置づけた。次期デジテリアシリーズに対する引き合いもすでに多数きており、今年度下期以降のビジネスの拡大が見込めそうだ。
(取材協力:.NETビジネスフォーラム)
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