官はサービスモデルへの転換勧める

IT関連企業はガイドラインに猛反発

 電子自治体システムでは、LGWAN─ASPの共同アウトソーシング事業が本格化してきた。昨年12月に総務省の委員会が策定した方針によると、電子申請や公的認証など基盤的な共通アプリケーションばかりでなく、財務会計や税務処理といった庁内業務システムの機能までASP型の共同アウトソーシングで提供するという。ソースコードを公開し無償化することを条件に登録制度をスタートさせるというのだ。(佃均(ジャーナリスト)●取材/文)

■10団体で推進協議会が発足

 昨年7月13日、東京・半蔵門の地方自治情報センター(LASDEC)会議室で電子自治体に関与する責任者30人ほどが出席する会議が開かれた。議題は「共同アウトソーシング推進協議会」で、この会議をもって協議会の発足とし、実質的な第1回会合となった。

 参加したのは総務省の自治政策課、事務局を務めるLASDECのほか、都道府県では北海道、山梨県、岐阜県、京都府、宮崎県、市町村では帯広市、甲府市、岐阜市、宇治市、宮崎市の計10団体。座長には北海道が選任され、協議会の下に企画運営部会とシステム部会を置くことなどが合意された。

 名前がよく似ているので間違えやすいのだが、2001年度に総務省主導で発足したのは「共同アウトソーシング協議会」、昨年7月に発足した協議会には「推進」の2文字が入っている。5年間の活動を終えた協議会が「推進協議会」に移行したかに見えるが、総務省は新たに「電子自治体のシステム構築のあり方に関する検討会」を組織している。

 ついでに同様の協議会を紹介しておくと、霞が関WANとLGWANの連携を検討するのは「電子行政推進国・地方公共団体協議会」、脱レガシーの技術的課題を検討するのは「データ標準化推進地方公共団体協議会」、官民連携を検討するのは「官民連携ポータル検討会」だ。

■OSSへの対応に温度差

 ところで、電子自治体とLGWANの指針づくり、共同アウトソーシングは自治政策課(前回登場した地域情報政策室は自治政策課の課内組織)、住基カードなど対住民行政サービス全般は市町村課、地域ネットワークは旧郵政省。施策の所管が縦割りで推進され、個別に予算措置がなされるため、ITに最も効力を発揮させる「横串」の体制が十分に整備されていない──と指摘される。

 この“穴”を埋めるため、旧自治省と旧郵政省は人事交流を進めているのだが、ここ数年の動きを見ると旧自治省の劣勢が目につく。電子自治体の構築に向けて市町村の議会を説得することも辞さない行動派で知られた地域情報政策室の前室長斉藤一雅氏(現・通信基盤課長)も、元岡透現室長も旧郵政省の職員だ。

 e─Japanプロジェクトでは当初から、国の機関や地方公共団体にオープンソースソフトウェア(OSS)を利活用することが指針として盛り込まれていた。基本的な考え方は行政情報システム各省庁連絡会議で合意され、政策をリードする総務省と経済産業省では一致していたが、総務省内の旧自治省、旧郵政省の間でOSSへの取り組みに温度差があった。旧自治省的にいえば、電子自治体のシステム構築は各市町村の自治権の範囲、旧郵政省的には全国一律の共通サービスという発想の違いがある。

 その温度差が端的に現れたのは、昨年の12月だ。「電子自治体のシステム構築のあり方に関する検討会」がまとめた電子自治体共同アウトソーシングのガイドラインがそれで、公表されるとたちまち各方面に波紋を呼んだ。ガイドラインには、「基幹系業務アプリケーションをOSS化し、LGWAN─ASPで提供する」とあったのだ。

 それによると、06年度事業として、(1)組織全体を通じた業務の最適化を図る設計手法の推進(2)電子自治体のシステムで取り扱うデータ標準化の検討(3)共同アウトソーシングのモデル構築と評価──の3点を示している。方策として「共通サービスモデルシステム」を開発し、「原則無償で市町村に提供する」とした。

 共通サービスモデルシステムは「フロントオフィス系」として電子申請、電子入札、文書管理など、「バックオフィス系」として財務会計、人事給与、庶務事務など、「基幹業務系」として住基、税、福祉などのほか、個別業務アプリケーションを整備する。

 06年度は統合連携システムとして、電子決済、職員認証の2システムを新たに開発する。LASDECの「市町村業務用プログラムライブラリ」に登録し、市町村が自由に無償でダウンロードして利用できるようにする。

 登録プログラムの条件は、オープンソースであること、Web型アプリケーションであること、機能モジュール型で分割が可能なこと、パッケージ提供会社は全国の地域をサポートする体制を持ちバージョンアップや機能改善などに対応できること──などで、「他の商用目的の利用を禁じる」とした。また、市町村が個々に運用する独自システムと共同アウトソーシングで提供するアプリケーション・サービスを、「LGWAN─ASPの統合連携システムで連携させる」とも明記している。

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■官の理論に反発相次ぐ

 行財政改革や少子・高齢化と財政規模の縮小、目まぐるしい技術革新などを考えると、地方公共団体が共通のアプリケーション・システムを使ったほうが合理的だ。「共同アウトソーシング」という言葉から認識されるのは、共同利用センター型で複数の市町村が共通のアプリケーションを利用する形態だが、ガイドラインが対象としたのはOSSパッケージの普及指針ではないか。

 市町村向けの業務処理システムを開発・販売しているIT関連企業から猛反発が出た。

 「市販の行政向けソフトウェアのソースコードを公開しろというのか」

 「国が予算を投入して市販パッケージの競合ソフトを開発し、市町村に無償で提供するのは民業圧迫ではないか」

 「全国の地域をサポートする体制が登録の条件では、パッケージを登録できる企業は自ずから限られてしまう。公正・公平なシステム調達の原理が崩壊する」

 「共同アウトソーシングでアプリケーションが無償で利用できるようになったら、地域のITサービス会社は立ち行かなくなる」

 これに対して自治政策課はこう言った。「自治体の財政が縮小するのは明らか。ITサービス業界には、個々の自治体にパッケージシステムを販売する発想でなく、サービスモデルに事業を転換することを勧める」。

 ソフト産業の振興を所管する経済産業省がかみついたのは、言うまでもない。