未来を紡ぐ 挑戦するソフト開発企業 

<未来を紡ぐ 挑戦するソフト開発企業>115.アイブライト

2007/02/26 20:44

週刊BCN 2007年02月26日vol.1176掲載

映像コンテンツをシステムと融合

 アイブライト(吉野茂社長)は映像コンテンツ制作など独自のサービス事業の拡充を進める。ソフトウェア開発を事業の柱としていることもあり、バックエンドのシステムと連携して動く映像コンテンツの制作を得意としている。ブロードバンド網や地上デジタル放送の普及でデジタルコンテンツの需要が急増しており「商機は大きい」(吉野社長)と手応えを感じる。

 ソフト開発で培った自社技術とデジタル映像に長けた外部スタッフが組んで制作する体制を2005年につくった。デジタルコンテンツはシステムと融合させてこそ価値が増す。両者をワンストップで提供することで相乗効果を出し、順調に受注を伸ばしている。

 もともと東京・豊島区でソフト開発会社の経営に携わっていたが、「地元に密着して、ユーザーの立場でサービスを提供したい」(吉野千鶴子取締役)との思いで02年11月に起業。心機一転、渋谷区に本社を構え、社員3人とともに営業を始めた。しかし新天地では、知名度の低さから「注文の電話が鳴るのをひたすら待つ」厳しい時期もあった。

 そうしたなかで、景気回復の追い風が吹く。企業のIT投資が拡大して開発要員不足が深刻化する事態をも経験した。創業時の苦しさを乗り越え、今ではエンジニアを中心に社員を約20人に増やすまでに事業が拡大した。誠心誠意仕事に取り組むまじめな企業姿勢が顧客から評価され、開発のために出向く客先に“アイブライト専用”の開発スペースを用意してもらうなど密接な関係を築く。

 ただ開発プロジェクトの中には500人月規模の巨大なものもあり、起業時の“地元密着”の方向性とは若干の違いがあるのも事実。受託ソフト開発の比率があまりにも高すぎると「特徴のないベンダーに陥ってしまう」。吉野千鶴子取締役は「上を向いて歩け」と社員に号令をかける。“足元のソフト開発で学んだ知識やノウハウをベースに新しいビジネスチャンスを考えろ”という意味だ。映像コンテンツ制作はこうした取り組みのなかから出てきたアイデアだ。制作した映像コンテンツは、ウェブやDVDなどさまざまなメディアで活用できるようにするなど、サービスの幅を広げた。

 昨年度(06年9月期)売上高に占めるソフト開発の比率は約8割に達し、約2割をサービス・サポートやデジタルコンテンツの制作が占める。今後はソフト開発と独自サービスのバランスを保ちながら事業拡大を図ることで、収益基盤をより強固なものにする。(鍋島蓉子)
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