次世代Key Projectの曙光

<次世代 Key Projectの曙光>1.NTTデータ(上)

2007/04/02 20:40

週刊BCN 2007年04月02日vol.1181掲載

緊急連絡のシステムを社内提案

 新たな成長の道を探るために、企業内で新規ビジネスの立ち上げが活発になっている。この企画では、新規プロジェクトの紆余曲折に焦点をあて、軌道に乗るまでの足跡を追う。
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 NTTデータの「FairCast(フェアキャスト)-子ども安全連絡網」は、学校からの連絡を家庭の電話、メール、FAXに一斉送信するサービス。複数の連絡先を登録すれば、受信の確認が取れるまで追いかけて連絡する機能もある。

 同サービスは、住田典子氏の経験から発想された事業だ。育児休暇中、PTA活動に携わり、連絡網の不備を実感した。近隣(奈良県西部)で起きた、子どもを狙った凶悪事件。緊急連絡が必要な事態で、メールや電話など、単一メディアに依存した情報伝達では限界があった。

 住田氏は総務職から社内の新規事業支援ファンド「i3(アイキューブ)ファンド」に応募した。アイデアペーパーの審査を「90審査」と呼ぶ。合格すると、次に調査研究期間を経て「27審査」に進める。この審査もパスすれば補助を受けながら実証実験に進める仕組みだ。審査のネーミングは、年間90件のアイデアのなかから、3分の1にあたる27件が実証実験に進むことを想定してつけられた。応募の多くは、業務のなかから発想し、既存サービスを広げるようなアイデアが多いが、「ゼロから生まれた生活者のアイデアは珍しい」というのが審査員の評価だった。

 90審査は合格。しかし「公立の学校で、PCの苦手な人でも使えるユーザビリティの高いサービスを安く提供したい」と、月額40円にこだわったことがネックになった。「“安い”と“簡単”は相反する」。簡単にするには、作り込みを行う必要があり、コストがかかる。審査員から技術面でもコスト面でも疑問視され27審査は不合格だった。「実は祝杯をあげるために、品川プリンスホテルに部屋を取っていた」と住田氏。思惑とは逆に、苦杯を喫し、ホテルにこもって泣きはらした。27審査の前に、実証実験のフィールドを探す必要がある。かねてから生駒小学校(奈良県)をフィールドにしようと考えていた。PTAの役員に審査に落ちたことを伝えると、「こんないいアイデアがなぜ落ちたのか。1度落ちたからといってあきらめるな」と背中を押された。審査に再トライした前例は1件しかない。しかし、顧客が一緒にやろうと言ってくれている。励ましの言葉を受けて、2005年7月に新規事業ファンドに再挑戦した。(つづく)
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