次世代Key Projectの曙光

<次世代 Key Projectの曙光>5.クレオ(上)

2007/05/07 20:40

週刊BCN 2007年05月07日vol.1185掲載

筆まめのメイン層に訴求

 クレオのパッケージ製品「筆まめ」シリーズには100万人以上ものユーザーがいる。このうちの大部分をシニア層が占めるという特殊なユーザー層を抱えている。何か筆まめのメイン層に訴求できるものはないだろうか。八木大造氏(社長室・シニアビジネス課長)はそう考えついたのをきっかけに、家族向けのコミュニティサイト「ファミリーウィングス」を立ち上げた。
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 同社には「アイデアマン」が多くいる。アイデアがあれば、上層部がいつでも積極的に耳を傾ける社風が以前からあった。現在では新規事業を創出する「クレオラボ」を立ち上げ、さらに社内から優れたアイデアを吸い上げやすい仕組みを築いている。

 筆まめのユーザー層の特殊性、すなわち中高年以上が多いことに着目し、「どんな形でもいいので、この年代に何かしらの幸せを売って対価をもらうことはできないかと考えた」と八木氏。2006年5月に再び社内公募の機会があった。以前にも新規事業の公募があり、同じ事業案で応募したことがあるが、ここでは落とされている。前回とほとんど同じ内容で提出したところ、後日、役員に呼び出された。そして役員は一言「本気か」と問うた。八木氏の答えは「本気です」。役員からは「蒲田の町工場の社長になった気でやれ」と後押しを受けた。

 こうして06年6月、企画が社長プロジェクトとして採用され、八木氏は社長室に異動。翌7月からプロジェクトが動き出した。トライアルの3か月間、シニア向け事業を行っている企業に足を運んでは意見を聞いて回った。シニア市場に関するマーケティングの本なども購入したが、「メディアの情報に毛が生えただけ」の代物で役に立たない。「二度と買わない」と後悔したこともある。企業を回り、担当者と話す。足を使って稼いだ情報こそが「生きた情報」。大きな糧になった。

 「シニアビジネスは成功していない企業のほうが多い」。苦しみながら取り組む先行企業の姿が見えた。筆まめのユーザーに、これから立ち上げる新規事業を利用してもらわなければならない。「うまくいくかどうか分からない事業にユーザーを誘うわけにはいかなかった」。単独でゼロからやることの難しさは容易に想像できた。

 そこで、すでに事業として成り立っているところとパートナーを組んで、共同事業として立ち上げようという手法にたどり着いた。
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