限定した範囲に訴求できる強み

 富士通では今年3月、微弱電波を使ってある特定のエリアに対して、ワンセグのコンテンツを配信する「スポットキャスト」を開発した。同社ではスポットキャストをコンテンツの配信や管理、保守・運用も絡めてストックビジネスとして展開し、得た利益を次の製品開発へとつなげていく。
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 スポットキャストを展示会やプライベートセミナーなどで発表したところ、会社ベースでいえば500-1000件も問い合わせがきた。「今夏頃までに製品化する予定だったが、予定が延びそうだ」と村田亮・サービスビジネス本部ネットワークビジネス推進統括部ネットワークサービス推進部プロジェクト課長は見通しを語る。そこには2つの課題があった。

 1つは富士通がIPや通信のことは分かっても、放送に関するビジネスや法規制などに明るくないことだ。微弱電波のため放送免許は必要としないが、同社では電波を管理している総務省やテレビ局、業界団体などと意見交換し、理解を得ながら調整を進めている。

 もう1つは、スポットキャストの電波は3メートル届くと報道などで伝えられているが「実は“受信できる範囲で動く”としか言っていない。場所によっては数十センチしか電波が届かないところもある」。日常生活ではさまざまな電波が飛び交っている。微弱電波だけに周囲のノイズに影響されやすいのだ。

 ただ、微弱電波でごく限られたエリアに情報を配信できることは、本当に情報を訴求したい相手にピンポイントで配信できるうえでメリットでもある。例えば「店舗の前で考えている人、何か買おうと思って立ち止まっている人などに向けてコンテンツを流すことができる」のだという。 

 使い方は「顧客ありき」だ。流通業が店舗に置いて特売情報を流すような使い方もある。また「水族館や動物園での館内ガイドなどのアイデアも出た」。テレビ局などでもワンセグを活用して独自の情報発信スタイルを模索したいとも考えているようで、利用シーンは幅広い。複数の企業の将来構想を聞き、どのような形でこの機器が役立つかについて話し合いながら、今年度中(08年3月期)には製品を世に送り出したい考えだ。(鍋島蓉子●取材/文)