今年3月に行われた「第5回八戸市中学ロボコン」で、見事にロボコン大賞と優勝を獲得した八戸市立大館中学校。大会では毎回、上位入賞を果たす強豪校として知られており、来年の大会に向けて早くもチームを結成、着々と準備に取り組んでいる。現在のチーム数は32(3年生のみ)だが、校内の選考などを経て最終的に大会に出場できるのは8チームから10チームほどに絞られるという。指導にあたる青山浩太郎教諭に大会へ向けての抱負と指導の秘訣などを聞いた。

中学ロボコンで優勝の栄冠

上位入賞常連の強豪校


人間関係の基礎づくりは、1年生のときから始まる


 大館中学ではロボット製作にかかわらず、1年生の時から、ことあるごとにチームあるいはグループを作らせ、協力し合うことや人間関係の大切さを学ばせている。

 青山浩太郎教諭は実際の様子を語る。

 「1年生の授業で初めてチームやグループを作らせると、やはり戸惑いや拒否反応はあります。あんな奴とは嫌だとか」

 チームメンバーのなかには手先が不器用で、なにかと遅れる生徒もいる。他のメンバーから不満が出るが、「不満を言う前に徹底して手助けしてやれ。それがメンバーだろう」と、青山教諭から叱咤激励が飛ぶ。ハッと気づき、以後は弟や妹に接するかのように優しくなったチームがあった。

 「1年間指導すると、生徒たちも分かってくれる。なぜチームが必要なのか、大切なのかを。進級してクラスが変わり、チームも変わるけれど、その時にはほとんど問題らしきものは発生しません。人間関係のコツのようなものを学んできたからです。その集大成として大会が待っている」

 こんなエピソードもあった。

 言葉使いが乱暴で態度もぶっきらぼうの生徒。ロボット製作にも渋々参加しているのは明らかだった。そんな彼を青山教諭とメンバーたちは黙って見守った。大会が近づき、遅くまで真剣にロボット作りに取り組むメンバーたち。ところが急にロボットが動かなくなった。どうやら電池が切れた様子。諦めて帰ろうとすると、問題の彼がいない。間もなく白い息を吐きながら彼が戻ってきた。そして差し出したものは、近くのコンビニで買ってきた電池だった。彼の「もうちょっと頑張ろうぜ」のひと言でチームは一丸となることができた。

 ロボットの完成を目指しても、期限内に作れないケースもある。また、せっかく苦労してロボットを作っても、校内の選考で落とされることもある。現実の厳しさを味わうこともまたロボコンの意義なのだ。

 「なぜ期限内に作れなかったのか、なぜ選考で落とされたのか。その原因を考えさせると同時に反省点も踏まえてもらい、今後に生かしてもらうのが、教師としての私の役割です」


先輩の活躍ぶりが大きな刺激となる


 今年、ロボコン大賞などを獲得した先輩(卒業生)の活躍を、後輩たちは間近で見ていた。上位入賞常連校というプレッシャーを感じつつ、自分たちもなんとか先輩たちの後に続こうと燃えている。

 「感動するほどうまいと思った。自分たちもあのレベルを目指したい。できれば優勝を」(3年生・米内哲理君)。「デザインや車体が目立ち、観客にもアピールしているのが分かった。それに仕掛けもよくできていた。自分たちも移動性と性能に優れたロボットを目指す」(3年生・神子沢俊君)。

 青山教諭も大賞を受賞したチームをこう振り返る。

 「チームワークのよさもさることながら、基本的なテクニックも一歩リードしていた。大賞を、優勝を目指すには何が必要かをチームで議論し討論を何度となく続けていました。さらに高得点を狙うための戦術面でも遅くまで練習を重ねていた。こうした先輩の姿を見て後輩たちは刺激を受け、新たな改良・改善を加えていく。こうした良き継承が大館中学の強みでもあると思います」

 ロボコン大会で気がかりな点もあるそうだ。出場校が毎回同じ顔ぶれという点である。八戸市と銘打っての大会である以上、他校からも参加して欲しいと願う。これまでに経験できなかった、新しい何かを見つけるきっかけになるはずと訴える。

 「ロボコンを活性化させるためには、すそ野を広げることも大切です。現在、小学校と中学校の教師同士が交流し、双方の授業などを参観するジョイント・スクールが実施されていますが、こうした機会を利用し、小学生のときからロボット作りやロボコンに興味を持ってもらえたら、と。それによって今後の展開にも新たな機軸が期待できるのではないでしょうか」

 八戸ロボコンの今後の盛衰は、縁の下を支える、青山教諭たちの地道な努力にかかっているといってもいいだろう。


ボランティアにも熱心 川村敏信教頭


 大館中学の創立は戦後間もない昭和22年。今年で創立60周年を迎えた。その間、ピーク時には1300名もの生徒数を抱えることになり、平成元年、一部を八戸東中学に分離。現在の生徒数は441名。

 クラブ活動が盛んで、なかでもバスケット、ブラスバンド、卓球は県内でも強豪校として知られている。また、市内では唯一の女子の新体操部の活躍も目立つ。

 生徒たちの印象を川村敏信教頭は次のように語る。

 「おっとりして素直な生徒が多い。それはボランティア活動などを見ても分かる。老人施設などを積極的に慰問して歓迎されているし、八戸えんぶり、三社大祭などの祭りにも参加、地域の伝統文化を大切にする傾向が強い」

 教育方針は「自ら学び創造性に富む生徒。広い心で社会に貢献できる生徒。情操豊かで健康な生徒」だ。ボランティア活動、祭りなどの地域交流・参加は、教育方針の実践の場でもある。

 「ロボット作りからもさまざまなことを生徒たちは学んでいる。とりわけ協力し合う心と姿勢は評価したい。大人の視点、発想からは生まれ得ないものを作ることもあり、まさに創造性に富む総合学習と言っていいだろう。今後は校内のみならず、他校との幅広い交流を増やし、生徒たちの見聞を広げたい。それが大館中学、ひいては市内の中学校を活性化させるキーワードとなるのではないか」


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