IT経営コーディネート 企業活性化にITCの妙手

<「IT経営」コーディネート 企業活性化にITCの妙手>12.ふじカプリス編(下)

2007/08/06 16:18

週刊BCN 2007年08月06日vol.1198掲載

IT活用でキャンセル激減

 ふじカプリスが設立されたのは1959年。“女性が気軽に集まれる場所”として、奈良直美代表取締役の母親が営業を開始した。創業当初は、編み物教室を中心に事業を手がけていたのだそうだ。奈良代表取締役は学生の頃から、「母親の店を受け継いでいきたい」と考えていた。海外でエステをはじめアロマセラピーや漢方療法などの資格を複数取得。“変わらぬ『美』への熱意”をコンセプトに「12年ほど前からエステ事業を手がける会社として再スタートを切った」という。

 最近では、資本力のある大手エステサロンのチェーン店展開が激しさを増しており、「価格競争では勝てない」と認めている。ふじカプリスの強みは、奈良代表取締役やスタッフの技術力。エステティシャンは奈良代表取締役を含めて4人だが、「大手チェーン店には負けない腕前」と自負する。しかも、母の代から続いていることから、顧客のほとんどが親子二代にわたって来店してくれている。業界で生き残っていくためには、強みを把握して“攻めの経営”を行うことが重要。「顧客本位のサービス志向が他店に負けない大きな資産」との判断でIT化を図ったことになる。

 IT化によるサービスで多くの顧客が活用しているのは、パソコンや携帯電話の自社サイトで提供している「空室状況」という。「女性の勤務条件が変わってきたことから、平日でも時間が取れるようになった」ためだ。顧客にとっては、サイトで気軽に検索できる点が好評。ふじカプリスにとっては「来店者が、ほかの時間に変更したい時にも使うため、キャンセル自体が極端に減った」との効果が出ている。

 今後は、サービス強化として「ネットなどによる通信販売」を次のステップに掲げる。サロンでは、ボディクリームやアロマオイルなど美容品を数多く販売。商品開発メーカーと特別なパートナーシップを築き、「当店にしか置いていない商品が多い」という。現段階では、顧客が来店した時にだけ販売している。「仕入先との契約もあり、当店のお客さんでないネットユーザーには販売できないが、顧客向け専用サイトで展開できないかを検討している」。地方から訪れる来店者もあり、「商品だけでも購入したいという声が多い」ためだ。ただ、「単に販売するだけでは顧客サービスとはいえない。顧客向けの専用サイトを立ち上げるのであれば、久しく会っていないお客さんとの距離が縮まるようなものにしたい」というイメージを描く。

 「当面は、年商を毎年50%アップさせる」ことを目指している。達成するには、「温かみのある顧客サービスの徹底」をあげる。しかも、「IT化した場合でも同様」と強調。ふじカプリスと顧客の双方にメリットをもたらすIT化を目指すということだ。(佐相彰彦●取材/文)
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