次世代Key Projectの曙光

<次世代Key Projectの曙光>22.野村総合研究所(下)

2007/09/10 20:40

週刊BCN 2007年09月10日vol.1202掲載

使う側のアイデアを反映

野村総合研究所(NRI、藤沼彰久社長)は今年4月、検索窓にキーワードを入力すると、関連した単語が表示される「連想検索エンジン」を開発したと発表した。事業化が承認されたのは今年の春で、海外と日本を結び、2006年から1年間の研究開発を進め、連想検索辞書を完成した。海外と日本による連携体制であったが、「順調に開発を進めることができた」という。

 連想検索エンジンは開発しながら、顧客や開発者からのフィードバックを受けることで迅速性を実現するアジャイル開発を採用した。3か月に1度の社内審査では次の計画に対する要素開発の予算取りの際に、投資に見合った効果が見込めることを、各事業部に説明しづらかったという苦労はあったものの、1年間の研究開発を経て、今年4月に事業化へとこぎつけた。

 情報技術本部から始まったプロジェクトは、当初NRI社内の3人でスタート、現在は8人まで人数が増えた。他のプロジェクトを掛け持ちするメンバーや、パートナー企業も入っているという。

 開発した連想検索辞書は、使い方を考えるよりも、まずは使いたい顧客にサービスとして提供し、顧客ごとに個別で使い道を考えていく方法に落ち着いた。情報技術本部技術調査部の大島修副主任は、営業とともに顧客先に出向いた際に、技術的な質問を受けるとともに、開発チームに顧客の声をフィードバックしている。訪問先で連想検索エンジンを使った面白いアイデアに出会うことがある。「実際に使う側と作る側では考え方が違う」と大島氏は感想を述べる。

 今年の冬には、NRIのウェブサイトに、連想検索エンジンを組み込む予定だ。「IT関連の刊行物をデータとして取り込んでいき、連想キーワードからNRIのホームページのナビゲーションとして活用していく」(大島氏)のだそうだ。

 チームリーダーを務める平野耕一・Principal Engineerは、「スクラッチで開発、結果的にいいものを作り上げることは、かけがえのないことだ」と語る。平野氏は05年から米国のNRIパシフィックに勤務中。「シリコンバレーでは、例えば、50社ある企業のうち10分の1は経営に失敗しているが、そんななかで何度となく経営者は新たな事業を立ち上げ、成功するための努力をしてきた」という。

 連想検索エンジンの生産性をあげていくことで、今後、さまざまなサービスを展開していきたいと考えている。(鍋島蓉子●取材/文)

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