次世代Key Projectの曙光

<次世代Key Projectの曙光>28.NTTコムウェア(下)

2007/10/22 20:40

週刊BCN 2007年10月22日vol.1208掲載

災害分野で群馬大教授と連携

 NTTコムウェア(今井郁次社長)は2002年、マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボの石井裕教授が提唱する無形の「情報」に形を与え、直接触れて操作できる「TUI(タンジブル・ユーザー・インターフェース)」の研究に着手。05年には防災分野のソリューション「タンジブル防災シミュレータ」を開発した。

 当初は独自で防災ソリューションを開発していたが、「タンジブルと関係のないグループのスタッフが、災害社会工学を研究する、群馬大学の片田敏孝教授を知っていたことがきっかけで話が進み、共同開発を始めた」(研究開発部スペシャリストの小林和恵氏)という。

 独自開発のシミュレータでは津波の大きさ、住民の要避難時刻、道路の通行状況、火災発生などがシミュレーションできる。片田教授と共同開発し、06年10月に発表した「タンジブル災害総合シナリオシミュレータ」では、さらにシミュレーション精度を向上させ、災害対策戦略策定、防災教育用としてUIの改良を行い、操作性を高めた。

 センステーブルにプロジェクターで地図を投影し、津波が発生した際の災害情報の伝達状況や住民の避難状況、被害状況などをアニメーションで分かりやすく把握できる。センステーブル上ではパック(駒)を動かしながら、避難住民の家族構成や、避難開始時刻などのシミュレーションの詳細を設定する。

 片田教授の開発した「災害総合シナリオ・シミュレータ」はWindowsベースで、当初デバイス上に載せることを想定していなかった。「マウスをただタンジブルに置き換えるのではなく、直感的なオペレーションデザインが必要だった」(成田篤信・研究開発部担当課長)ため、機能を取捨選択していった。

 自治体中心での販売を想定し、引き合いはあるが、「導入には時間や資金もかかる」(成田氏)。導入はこれからだが、中長期的に研究投資に見合う売り上げをあげたいと考えている。(鍋島蓉子●取材/文)
  • 1