IT経営コーディネート 企業活性化にITCの妙手

<「IT経営」コーディネート 企業活性化にITCの妙手>27.ものづくりネット板橋(上)

2007/11/26 20:45

週刊BCN 2007年11月26日vol.1213掲載

町工場の“仲間づくり”でIT利用

 東京・板橋区は、製造品出荷額が大田区に次ぐ都内有数の製造業集積地。「ものづくり」が中国などに奪われ、産業の衰退が進むなか、行政主導で製造業振興を目的とした地域の「ものづくり支援策」が活発化している。

 こうした状況下で、板橋区商工振興課が1999年、「共同受注グループ」をつくるために「勉強会」を開催。ここに集った企業グループ(発足当時は16社、個人会員3人)で、翌年結成されたのが「ものづくりネット板橋」(紀孝会長=紀塗装工業所・代表取締役)である。グループ内の「協働開発」によってアイデア商品を多数生み出したことで、下請け体質が見直されつつある。

 この「勉強会」に当初からかかわったのが、ITコーディネータ(ITC)の八木田鶴子氏(テオリア社長)である。当時から現在まで、中核メンバーとしても活動。発足時から月1回以上の会合を開いている。しかし、連絡がままならず、「みんなでアイデアを出し、製品づくりするために、どうやって力を合わせるか分からなかった。まずは、これまでの連絡手段であったFAXや電話だけでなく、パソコンを利用した伝達方法を考えた」。中小企業のIT化を推進する一般的なITC活動とは異なる「仲間づくり」に必要な道具として、パソコン導入などを地道に啓蒙し続けてきたという。

 製造会社は、生産に必要な機械などには、1000万円単位の投資でも惜しまない。だが、「使い道が分からないIT投資は10万円でも躊躇する」(八木氏)ため、月1回のペースで「パソコン教室」を開催し、ITの現状や使い方を会員に理解してもらう活動を行ってきた。

 当時は、電子メールを使いこなす企業はわずか3社。会合の開催連絡をいちいちFAXでやり取りしていた。だが、「パソコン教室」の開催などを機に、製造会社の二代目の若手を中心に「メーリングリストやホームページをつくろう」という声を受けて立ち上げ、いまやネット上の「バーチャル展示会」を開催するまでになっている。

 発足当時、中小企業庁の施策「コーディネート活動支援事業」の採択を受けた。その補助金で、情報リテラシーを上げる作業から八木氏を中心に一歩ずつ活動を実施。紀会長は「ITを現業に結びつけるというより、仲間づくりにITが役立つことが分かった」と、少しずつだが、IT利活用に目を向ける。現在、加工や受注といった仕事に加え、消費者ニーズを捉えた製品を開発するまでに連携が深まった。世界初の「虹発生装置」は、そんな連携から生まれた“癒し”製品だ。(谷畑良胤●取材/文)
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