家庭の味追求とIT化を見極める

 和惣菜製造のアオヤマは、煮物など商品数で100種類以上、1日平均2万パック以上を出荷している。売上高は、今年度(2008年6月期)で約9億円の見通し。直近6年間は、毎年1億円程度の伸長を果たしている。

 取引先は、地元・香川県のスーパーを中心に15社弱。現段階では、全国の大型店から引き合いがきている状況で、同社の和惣菜を求める店舗は数知れない。なぜ、人気があるのか。青山重俊代表取締役は、「家庭の味を追求しているから」と説明する。

 通常、和惣菜業者による製造は一度に50-60キログラムの食材を煮込んでいく。ところが、同社は2キログラム単位で調理するという。「家庭では、50-60キログラム単位で煮込むことは絶対にあり得ない。徹底的に味を追求するのであれば、少量なのが一番。2キログラムという量は味を追求しながら、なおかつ生産性を高めるうえでの限界点」。消費者からは、「3日経っても味が落ちない。むしろ、味がしみ込んで深みが出る」との評判を得ているそうだ。多くの“ファン”を確保していることが同社の強みといえる。

 しかし、現場の作業は他社と比べれば非効率であることは確かだ。そのため、売上高の増加にも限界がある。だからといって、「商品の品質を落としてまで今のやり方を変えるつもりはない」というのが青山代表取締役の譲れないコンセプト。そこで、ITコーディータの長尾和彦・エイド代表取締役が経営革新を中心としたIT化(品質に直接関係しない前工程部分の徹底的な効率化)を進めることになる。

 青山代表取締役は長尾氏のアドバイスで導入した情報システムにより、「導入前とは異なった、もう一つのやり方を手に入れた」としている。これまで、「何でも直感で経営判断してきた」ことの反省に立っての思いだ。会社を成功に導く“勘”が鋭いため、手を打ってきたことが成長に結びついた。しかし、「今後はこれまでの経験を数値にしたデータを使ってビジネスを拡大することも必要」と認識している。

 ただ、青山代表取締役が根っからの“IT嫌い”であることから、現在は長尾氏が非常勤のCIOとして就任。「例えるなら、私が言葉より先に体が動く“動”、長尾さんが慎重に計画を練る“静”。このバランスで信頼関係が築けているのではないか」と青山代表取締役は打ち明ける。

 同社の課題は2つある。1つは、品質を損なわず、しかも現場スタッフが一段と効率化が図れるような仕組みだ。もう1つは、同社の味をOEM提供できるような体制を敷き、さまざまな企業と提携していくことだ。これを、“動”と“静”のタッグで実現を目指す。(佐相彰彦●取材/文)