次世代Key Projectの曙光

<次世代Key Projectの曙光>41.サイボウズ(上)

2008/02/04 20:40

週刊BCN 2008年02月04日vol.1221掲載

新しいイノベーション起こす

 サイボウズ・ラボ(畑慎也社長)は2005年、サイボウズ(青野慶久社長)の子会社として設立された。大企業では組織の中に研究開発部門を抱え、中小企業でも独自のR&D部門をもっているところはある。サイボウズの場合、新サービスやプロダクトを開発するに当たって、既存製品にとらわれることのないよう距離を置くために分社化したという。

 「もし、同一組織内に研究開発部門があるとなると、既存製品にとらわれてしまい、既存製品を拡張するような役割の部門になりかねない」(畑社長)。新しいイノベーションを起こすべく、サイボウズとは距離を置き、05年に設立されたのが、サイボウズ・ラボだ。設立当初は2人から始まり現在は約10人をほどを抱える。

 「オフィスが別な場所にあるので、事務処理が二重になってしまう。会社を運営するうえでの管理には手間がかかっている」。だが、人の管理という点ではさほど苦労していないようだ。「今の人数規模なら、組織をまとめるということよりも、どうやって新しいものを生み出すかを注力ポイントにおいている」のだそうだ。

 これまでには、海外サイトのUI(ユーザーインタフェース)を日本語に翻訳する「Japanize(ジャパナイズ)」やその多国語版「Mylingual(マイリンガル)」などさまざまなサービスをリリースしている。ライブラリレベルの「小ネタ」もちょくちょく出している。「小出しにして、ユーザーからのフィードバックを受け、それからさらに多くのユーザー層に使ってもらえるようになったらリリースしていく」方法をとっている。

 会社組織といえど、エンジニアの集団。上からの指示ではなく、開発はボトムアップで始まる。プロジェクトの進捗については情報共有を行っている。「自然発生的に一人で始まって、そのうち、関連する得意分野を持った人材に『ちょっと、ここ手伝ってあげて』と声をかけたり、メンバーが自主的に参加しながら、開発が進んでいく」のだという。

 モノづくりをする際、エンジニアが考えることは十人十色だが、共通するのは、「ユーザーに便利に使ってもらいたい」という思いだ。さらにいえば「多くの人に影響を与えたい」。エンジニアはソフトウェアを作ることで、自分の存在を外に向かって示しているのだと畑社長は話している。(鍋島蓉子●取材/文)
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