IT経営コーディネート 企業活性化にITCの妙手

<「IT経営」コーディネート 企業活性化にITCの妙手>36.小竹興業(下)

2008/02/25 20:45

週刊BCN 2008年02月25日vol.1224掲載

ユーザーと信頼関係築く

 小竹興業にとって最適なシステムとは何か。「把握するために現状のシステムを見せてもらった」と、ITコーディネータでダイナックス高松の社長・大和田昭邦氏は2000年頃を振り返る。

 当時は、経理システムのみがコンピュータ化されていたが、小竹興業はシステム改善に向けて建築業界独特の見積書作成をできるだけ自動化したいという要件をあげた。さまざまなシステムが連携し、見積りや経費積算段階から、建築終了時や下請業者に対する支払い時まで多様な変化をトレースすることを求めたわけだ。大和田氏は、「まずは小竹興業さんのなかで、業務に詳しい専務から具体的な内容を聞いた」という。そこで、完成したのが見積書作成のExcel表でネット価格や交渉価格結果、実際の支払価格の流れで建築案件全体の発注原価を積算できるシステムだった。「建築経理に詳しい経理担当者が当社(ダイナックス高松)にいたことが大きな助けになった」。社員が一丸となってプロジェクトを遂行したわけだ。加えて、「(業務内容を説明してくれた)専務が積極的だったこともスムーズに進んだ要因」としている。

photo また、小竹興業全社でパソコン導入を実現するため、社内LANの構築も手がけた。メインの通信は有線に設定したが、無線LANも活用できるネットワークインフラを構築。大和田氏は、「無線LANを敷設する際、高度情報化に対応したフロアに改装するケースがある。しかし、既存のままでネットワーク回線が行き渡るように工夫した」としている。

 ハードウェアに関してはノートパソコンを提案。「本来なら、デスクトップのほうが安く済むが、現場にパソコンを持っていきたいというニーズが必ず出てくる。こんなことを含め、購入する際のノウハウを提供した」。パソコンメーカーとの値切り交渉などを支援することで安価に導入できた。

 IT化を進める際、予算は多いほうが最適なシステムを導入できる。それは、ユーザー側もよく認識している。しかし、コスト削減に向けてのシステム導入に莫大な費用がかかってしまうのであれば本末転倒。小竹興業も、「収益に見合うシステムでなければ導入することはできない。大きな投資で利益を確保できなければ導入しないほうがよい」(小竹彰・常務取締役管理部長)と考えた。そこで、依頼を受けた大和田氏は「低予算で適したシステムを構築しよう」と決意したのだ。

 実際、予算は厳しい条件だった。しかし、「信頼関係を築いた点は大きい」と、大和田氏は力を込めて語ってくれた。(佐相彰彦●取材/文)
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