奔流!ネットビジネス 百戦錬磨の勝者にseedsを探る

<奔流!ネットビジネス 百戦錬磨の勝者にseedsを探る>動画投稿サイト編(第3回)

2008/06/16 16:04

週刊BCN 2008年06月16日vol.1239掲載

成否握るマーケティング

 世界大手のYouTubeに席巻されると思われた国内の動画投稿サイトビジネス。ぎりぎりのところで踏みとどまるきっかけをつくったのがニコニコ動画だった。アニメやゲームの支持層を巧みに取り込み、独自のコメント投稿機能を付加。特異な動画コミュニティを構築した。

 ニコニコ動画では、アニメやゲームといった“二次元好き”のユーザーに向けて、今年4月から新作アニメを先行配信している。そのなかで、ほぼ毎週アップロードされる学園ラブコメディ「ペンギン娘はぁと」は、1話あたりの再生数が平均15万回の人気を博す。視聴そのものは無料だが、主題歌CDや原作コミックといった関連商材を積極的に販売。売り方や実際の売れ行きを綿密に計測し、投資対効果を最大化するマーケティング手法の確立を狙う。登録会員数700万人をターゲットにした壮大な実証実験ともいえる。

 収益のカギはセグメント化されたユーザーに対し、どれだけ有効なマーケティングを展開できるかにある。YouTubeがあらゆるユーザー層を取り込む総合動画サイトだとすれば、ニコニコ動画は「二次元比率」が高く専門的だ。これを生かして有望なアニメやゲームコンテンツを呼び込み、関連する広告や商品の販売で稼ぐ。ニコニコ動画と組むことによって“コンテンツホルダーが儲かる”という構図を証明できれば、より多くの人気コンテンツを揃えられ、ユーザーをさらに増やせる好循環が生まれるはずだ。

 国内には二次元支持層が多いとはいえ、アニメ的な表現を受け入れられない層も少なくない。そこを狙ったのがzoome(ズーミー)だ。ADSL通信サービスなどを手がけるアッカ・ネットワークスグループが運営する。今年4月に、番組制作会社のアイ・ヴィ・エステレビ制作(IVSテレビ)と共同してコスプレ動画投稿企画をスタート。コスプレはアニメやゲームと並ぶサブカルチャーの1ジャンル。ただし、実写(=三次元)なのが二次元アニメとは異なる。ここを切り口にニコニコ動画にはない要素を増やす戦略だ。

 6月4日にはIVSテレビとの共同企画第2弾である「グルメな女性向け動画投稿企画」をスタート。女性がランチ風景や料理関連の動画を投稿することで「食の喜び」を仲間と共有し、飲食店の情報交換などを楽しむという内容。三次元的な切り口はそのままで、女性的な観点を増強した。ニコニコ動画のユーザーのうち約7割が男性であることを考えれば、競合他社が女性ユーザーを取り込む余地はまだ十分にある。動画投稿サイトはそれぞれの特徴を打ち出して勝ち残りを目指す。(安藤章司●取材/文)
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