奔流!ネットビジネス 百戦錬磨の勝者にseedsを探る

<奔流!ネットビジネス 百戦錬磨の勝者にseedsを探る>動画投稿サイト編(第4回)

2008/06/23 16:04

週刊BCN 2008年06月23日vol.1240掲載

収益モデルの強化急ぐ

 大いに盛り上がる動画投稿サイトだが、ビジネスの切り口で観察すると厳しい側面もある。

 国内最大手のニコニコ動画を運営するドワンゴグループは、膨大なトラフィックを支えるインフラ構築のため、昨年末までに累計約20億円を投じた。今年に入ってからも毎月2-2.5億円の維持費用がかかる。一方、収入は広告やアフィリエイト販売、一部有料会員の会費など。今年3月時点で月商1億5000万円余りまで拡大したものの、経費との差は約1億円。赤字だ。

 コスト高は他の事業者も抱える共通課題。アッカ・ネットワークスグループが運営するzoomeは、6月に入って体制を一新。これまでアッカ本体が直接運営していたが、zoome事業を専業とする子会社を新設した。現在は100%子会社だが、他の事業会社との資本提携を含めたアライアンスを迅速に進め、早期の利益回収を図る。

 動画投稿サイトは、視聴者であるユーザー自らがコンテンツを制作をするのが基本。しかし、だからといって運営会社がインフラづくりだけに専念していては、サイト全体の方向性が見えなくなる。ニコニコ動画ならばアニメやゲームに強く、zoomeだったら実写コンテンツに強いという具合に、ユーザーセグメントを明確化させなければ、広告やアフィリエイトがやりにくい。雑多な内容では、世界最大の規模を誇るYouTubeとの差別化も困難で、ユーザーにも飽きられる。

 ユーザーとともにコンテンツを形成するセンスやエンターテインメント性が、運営会社に強く求められるのが動画投稿サイトビジネスの特徴だ。

 アッカはもともと通信事業者で、エンタメ方面のノウハウが少ない。「尖ったことをするには、これまでとは違う水や肥料が必要」(アッカの須山勇社長)と、zoome事業を共同で展開するアライアンス先を模索する。動きの速い動画投稿ビジネスだけに、時間的な猶予はない。「早ければ今年秋口にも新しい方向性を出す」(アッカの塚本博之副社長)と、パートナーの選定を急ぐ。コンテンツに強い事業会社をzoomeに結集させ、アッカ本体は得意のインフラ構築に徹する構えだ。

 ただ、パートナーの頭数を集めすぎて総花的になるとYouTubeには勝てない。かといって独自色が強すぎるパートナーだとコンテンツが固定化され、ターゲットとするユーザーが狭まりすぎる。他社と十分に差別化でき、かつある程度の自由度をもってユーザーを柔軟に獲得できる機動性の両立が求められる。膨大なインフラ維持コストのかかる動画投稿サイトだけに、収益モデルの強化は待ったなしだ。(安藤章司●取材/文)
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