視点

確実に減少する違法コピー

2008/07/07 16:41

週刊BCN 2008年07月07日vol.1242掲載

 今年もBSAの「第5回世界ソフトウェア違法コピー調査」の結果が発表された。日本は順位を1つ下げて4位になったものの、使用されているPCソフトに違法コピーが占める率は、前年から2ポイント下がり23%になった。ここ数年、日本の違法コピー率は確実に減ってきており、ACCSの活動成果が反映されているものと自負している。

 一般的にACCSは、刑事事件の調査やオークションサイトの違法出品対策のイメージが強いようだが、組織内などでの違法コピーに対しても民事手続きの支援を行っている。活動を始めた1998年から昨年度までの和解金の合計額は80億円を突破した。

 違法コピー率の減少とともに、意図的に違法コピーをしているような例は聞かなくなった。企業における法令遵守の意識が高まるにつれてソフトウェア管理を行わなければならないという意識も高揚しているとみていい。もちろん、管理者の目が届かないところで違法コピーはあるかもしれないが、組織的なものではなく、その徹底が不十分である場合が多い。

 昨今は、業界ごとに啓発活動を行っており、昨年度は、4月に全国約2万6000の社団法人と財団法人に対して、また、10月には全国約9000の医療機関に対して、ソフトウェア管理の徹底を呼び掛けるDMを発送した。教育分野では、今年6月、全国の都道府県・市町村教育委員会と私立小・中・高等学校に対して、リーフレットなど3点を「著作権啓発セット」として送付したほか、4月には全国の大学と高等専門学校802校に対してファイル共有ソフトの利用について学生に対する適切な指導を求める要請文を送付している。さらに、今年は「ソフトウェア管理者養成講座」を東京と大阪で開講する。すでに2月にはACCS会員を対象に30人が参加したトライアル講座を2日間5時間にわたって行った。

 冒頭に書いたBSA調査で違法コピー率が最も低いのは20%の米国である。しかし、日本がトップになる日は遠くないと信じて違法コピー対策を行っている。ぜひ、利害を共にする販売店の方々にもご協力いただきたい。なお、ACCSの啓発活動で使用している「経営者のための違法コピー防止ガイド」や「豊かな情報社会への正しい知識と思いやりのある行動『情報モラル』」といったパンフレットはACCS Webサイトから送付申込み、購入申込みができる。ぜひ、活用していただきたい。

 
一般社団法人 コンピュータソフトウェア 著作権協会 専務理事 久保田 裕
久保田 裕(くぼた ゆたか)
 1956年生まれ。山口大学特命教授。文化審議会著作権分科会臨時委員、同分科会国際小委員会専門委員、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会理事、(株)サーティファイ著作権検定委員会委員長、特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会情報モラル担当理事などを務める。主な著書に「情報モラル宣言」(ダイヤモンド社)、「人生を棒に振る スマホ・ネットトラブル」(共著、双葉社)がある。
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