業績低迷がIT化を後押し

 大阪府東大阪市に本社を構えるペンチ・ニッパ製造のフジ矢。1923年創業の老舗企業で、国内市場で業界トップメーカーの地位にある。創業以来、“品質第一”の精神で製品を作ってきたことが名を轟かせている所以だ。その同社がIT化を含めた経営革新で一段と飛躍を遂げている。

 導入したITシステムは生産管理である。販売予測データをもとに見込生産が行える仕組みだ。営業担当者が作成する販売予測データに基づき、どの製品をどのタイミングで製造するかという指示書が現場に届く。同社は、約550アイテムを扱っている。アイテム数が多いだけに、まとめて作るとなると過剰在庫が発生する危険性がある。生産管理システムを導入したのは2002年10月。6年目を迎えた現段階で、導入前と比べて約40%の在庫圧縮が実現できている。野崎恭伸社長は、「コスト削減だけでなく、売り上げも順調に伸びている」と自信をみせる。導入前に6億円程度だった売上高は、今では10億円にまで達している。

 父親の後を継いで野崎氏が3代目社長に就任した際にたまたま経営難だったことが、同社がIT化に踏み切る最大の後押し要因となった。父親の急逝という突然の出来事で、トップとして経営の舵を切ることになった。しかし、当時の業績は売上高が右肩下がりとなって最盛期の約2分の1程度、2期連続の赤字という状況だった。「親父から会社を引き継いだものの、どうしたらいいのだろうか」というのが当時の偽らざる気持ちだったそうだ。歴史のある会社だけに、自分の代で潰すことなどできない。そこで01年秋、経済産業省と独立行政法人のIPA(情報処理推進機構)が行っていた中小企業の経営者を対象とする情報化投資支援事業「ITSSP」に参加。IT化による経営改革の必要性を実感したという。

 ITSSP事業に参加した際、大阪商工会議所経由で紹介されたのがITコーディネータの川端一輝氏だ。有限責任事業組合「IT-Labo.」の理事長を務める人物である。情報処理サービス会社を設立し、多くのシステム構築やコンサルティングを手がけた経験も持つ。長年に渡って培ったITや経営などに関するノウハウを生かし、ITCインストラクターとして人材育成にも力を注いでいる。

 二人は、フジ矢がITSSP事業に参加していたのをきっかけとして出会った。野崎社長の第一印象を川端理事長は、「前向きな姿勢がにじみ出ていた。さらにいえば、社内で求心力がある人物だとも感じた」と評価する。局面の打開に向けて積極姿勢をみせるフジ矢の野崎社長と、IT化や経営革新のプロである川端理事長が出会い、フジ矢の抜本的な経営革新が始まった。(佐相彰彦●取材/文)